北海道江別市でケアプランセンター、小規模多機能ホーム、デイサービス、訪問看護ステーションを運営するみのりの丘グループ

みのりの丘

みのりの丘代表ブログ

やぶ医者が儲かり名医が損をする

2023.5.18

『財務省は11日、財政健全化への道のりを話し合う審議会を開催し、社会保障制度の改革の具体策を提言した。介護分野では、要介護度が重くなると介護報酬が上がる現行の制度設計の是非を取り上げ、特に居宅介護支援のケアマネジメントの基本報酬に疑問を呈した。居宅介護支援の現行の基本報酬は要介護3以上は要支援2以下と比べ、3.2倍も高い水準に設定されている。この他、質の高い事業所に上乗せして支払う「特定事業所加算」の要件に要介護3以上の利用者の割合が含まれるなど、重度者への対応が手厚く評価されている。財務省はこうした現状を踏まえつつ、国の昨年度の調査結果を紹介。「実際の利用者1人あたりの労働投入時間をみると、要介護度の重軽による違いはそこまで大きくない」と指摘した。』

との報道を見て思うこと。

 

長年高齢者介護のケアマネジメントに携わってきて感じることとしては、上記指摘

のとおり、利用者1人あたりの労働投入時間をみると、要介護度の重軽による違い

はそこまで大きくない。

 

また、上記指摘にある労働投入時間が多くなるタイミングは、”導入する時”と

”変化する時”であって、その時には要介護度の重軽は相関しない。さらに、質の

高いケアマネジメントが求められる時も要介護度の重軽は相関しない。

 

質の高いケアマネジメントの重要な要素の一つは、”変化に気が付くこと”であり

”その変化に対応すること”である。この”変化”は環境因子や個人因子、健康状態

が不安定であればあるほど起こりやすく、要介護度の重軽やによって偏りが大きく

なることはない。

 

ただし、もう一つの質の高いケアマネジメントの重要な要素と考えられる”元気だ

ったころの日常を取り戻す”ことについては、思うことがある。

介護予防と称するこの考えに対する医療専門家が中心となって構成される検討チー

ムの発想は”健康状態の改善”一辺倒である。高齢者をリハビリ漬けにしたうえで、

食事や水分を半ば強制的に摂取させるなど、「体のメンテを怠らなければ日常が

取り戻せる」という貧相な考えしかない。

 

残念ながら人は、生物学的見地から加齢に伴う衰えに抗うことができない。

そのため、介護が必要な状態になりやすい。だからと言って、健康状態が改善しな

ければ”元気だったころの日常を取り戻す”ことを完全にあきらめなければならない

わけではない。

この検討チームの発想は、要援護高齢者を半ば強制的に馴染みの日常から切り離し

公的サービスの導入によって、サイボーグ人間を作ろうというもので、個人の意向

などは完全に無視されている。

 

この検討チームには”元気だったころの日常を取り戻す”うえで重要な要素として

「住み慣れた家庭や地域内の所属的欲求の維持向上」という視点が欠けている。

別段、体が不自由になったからと言って家庭内や地域内で一定の役割を担えない

わけではない。役割を担う上で”お手伝い”が必要なのであればその部分だけ援助を

受ければよい。そして、その援助は公的サービスが最適とは限らない。

 

質の高いケアマネジメントの重要な要素の”元気だったころの日常を取り戻す”ため

介護支援専門員に求められる役割は、インフォーマルな社会資源の発見・活用・

創造である。

しかし、介護支援専門員がいくらこの役割を担ったとしても介護報酬という形で

評価されることは一切ない。

 

要介護度によって介護報酬を変える必要はないと思うが、今の居宅介護支援事業所

にかかる介護報酬体系は、例えるなら「やぶ医者が儲かり名医が損をする」内容と

なっている。