介護保険サービス事業所に所属する職員は、何故ご利用者やご家族から金品の授受
を行ってはいけないのか。
介護保険の法律上で居宅介護支援事業所やその職員が介護保険サービス事業者から
金品の授受を通してご利用者を紹介・斡旋することを禁止している文面はあるが、
介護保険サービス事業者がご利用者からの金品の授受を厳密に禁止している文言
自体はない。つまり、ご利用者等から金品を受け取っても罰せられる法律が無いの
である。
とすると、介護保険サービス事業所を運営する法人の多くが、ご利用者からの金品
の授受を全面禁止しているのはなぜだろうか。
「それは職業倫理に反するから」と言ってしまえばそれまでだが、その一言だけを
もって、所属する職員に禁止を伝えるのはあまりにも雑な説明だろう。
公的社会保険サービス費は、その財源の大部分を税金や社会保険料等の公的資金に
よって形成されており、介護保険サービスの利用については一定のルールの下で皆
に等しく対応することが求められている。つまり、介護保険サービス等の公的社会
保険サービスは、法の下で公平性が担保されなければならないのである。
そんな中で、介護保険サービス事業者や所属する職員がご利用者やご家族から金品
の授受を行えば、公平性が大きく崩れてしまう危険性がある。
金品を手渡したご利用者等が、悪意はなくても”少しくらいの手心”を期待すること
は人情としてあり得るし、受け取った事業者や職員にも同様に人情が働くことは
あるだろう。仮に当事者に”手心への期待”が全くなかったとしても、客観的第三者
の目には”心温まる人情”とは映らない。
ご利用者等からの金品の授受が常態化し、多くの国民から「介護保険サービスは法
の下で公平ではない」と認識されてしまえば、『お金持ちだけが優遇される制度』と
いう扱いになってしまう危険性が大いにあり、公的社会保険サービスとして存在意
義を失うことにつながってしまう。
そのことを一言で表現すると「職業倫理に反する」ということになる。
先日、訪問したご利用者宅で出てきたお茶菓子をお断りしたところ、「何でせっかく
用意したのに断るの」「朝から準備して出すことを楽しみにしていたのに」といって
お叱りを受けた。
この会話の中で”手心への期待”など一切感じなかったし、客人へ最低限の礼儀とし
ての振る舞いであることは十分に理解することができただけに、お断りすることは
忍びなかったが、些細なことからほころびが生ずると思うと致し方ない。
