厚生労働省は、先月末に開催した「社会保障審議会介護保険部会」において、介護
保険制度の持続可能性をどう確保していくべきかについて、「給付と負担のあり方」
を俎上に載せたそうだ。
そしてこれから、2027年度に控える次期介護保険制度改正に向けた論点とし
て、軽度要援護者(要介護1、2)への訪問介護と通所介護サービスについて、
市町村がそれぞれ運営する地域支援事業に移すことがこれから検討されていく。
予てから財務省は、「介護の人材や財源には限りがある」とか「給付を重度者に重点
化していく必要がある」として、サービスの運営基準の緩和やボランティアの活用
などでコストを下げつつ、地域支援事業への移管を繰り返し訴えてきた。
そのことに対して、高齢者介護業界からは「要介護度1、2の高齢者への適切な
ケアは、在宅生活を継続するために必須で、地域支援事業への移管を実施すれば、
専門性の乏しいサービスで対応することになり、自立支援のケアを劣化させる」と
か「サービスの質・量を確実に低下させ、長年築いてきた在宅ケアは著しく後退し
てしまう」あるいは、「認知症の場合、要介護1、2など身体的に元気な人ほど家族
の負担が重くなるという現実がある。認知症の人や家族のために、訪問介護や通所
介護などの重要なサービスは給付として必ず死守してほしい」といった反対意見が
出ているらしい。
そして、業界の多くの人が上記の反対意見に賛同しており、財務省を敵対視して
いるのだが、客観性や論理性を考えた時に財務省の言うことと業界関係者がいう
ことのどちらが”真っ当”なのだろうか。
前者は、例えるなら「今10人で10の仕事している状態が、8人で12の仕事を
することになるので、1人あたりの負担が増えてしまうから根本的に仕事内容を
見直さないとならない」と言っているのである。
今1人で1の仕事をしている状態から1人で1.5倍の仕事量に増えるし、経済的
負担も同様の状況になるということだ。
後者の高齢者介護業界関係者の意見には、「介護の人材や財源には限りがある」こと
が全く加味されていない。今業界では人手不足を補うために外国人労働者を積極的
に活用する動きが強まっているし、介護の機械化を推し進めようとしている。
それほど深刻な人材不足の状況にあって、高齢者人口が増え続けることを加味する
と、業界関係者は我々現場の者に「より安い給料で今の倍働け!」と言っているに
等しいと言う自覚を持ってそのような暴論を吐いているのだろうかと思う。
業界関係者は大きな声で「サービスの質・量を確実に低下させ、在宅ケアは著しく
後退してしまう」などといって反対しているが、彼らの言うとおりにすると質や量
は益々低下することになり、地域格差も広がる一方となることだろう。
さらに言うと、「地域支援事業への移管を実施すれば、専門性の乏しいサービスで
対応することになり、自立支援のケアを劣化させる」とは、何を根拠としてそのよ
うなことを言っているのだろうか。
大変残念なことではあるが、介護保険サービス事業に従事する専門職の中で自立支
援ケアに精通していて実践できている人はほんの一握りしかいないのが現実だ。
そもそも彼らが得意としていることは、支援が必要な方に対して適切な方法で対処
することであって、自立支援を促すことではない。
それは、どこの通所介護へ行っても、自分で体を洗うことができる人に対して介入
して介助していることからもわかる。しまいには、自宅で一人で入浴できている人
に対して入浴サービスを提供している始末だ。
はっきり言って、「自立支援のケアを劣化させる」ではなく、初めから自立支援ケア
など存在していないに等しいのである。
まだまだ言い足りないことはあるが、少し長くなってきたので続きは次回に持ち
越そうと思う。
