今月21日に高市新総理大臣が打ち出した21兆円を超える「強い経済を実現する
総合経済対策」を受けて、令和9年度に予定されている次回の介護報酬改定時期を
前倒しして来年度にその一部を施行することになることが概ね決定したとして話題
になっている。
その背景には、物価や賃金の急激な高騰に現状の介護報酬が見合っていないことか
ら、運営の継続が困難な介護保険サービス事業者が続発しているうえに、必要な人
材を獲得する財源に乏しく人材不足に拍車がかかっていることが挙げられる。
そのため、近く国から介護報酬の引き上げや介護スタッフ等の更なる処遇改善を
図る方針が示されることになっている。
こうした状況の中で一つの話題にあがっていることは、これまで除外されてきた
「居宅介護支援事業者のケアマネジャーにも処遇改善加算の対象とすべきである」
という内容である。
当方も居宅介護支援事業を運営しており、そこに複数名のケアマネジャーが所属し
ている。国がケアマネジャーの処遇改善を図ってくれるのだとするとそれは大変あ
りがたいことだ。
ところが一部の識者には、「ケアマネジャーの処遇改善と居宅介護支援費の自己負担
導入をセットで実施することはまかりならん」と訴えている方が相当数いる。
でも、この人達の主張を聞いているとはっきり言って「ご都合主義の二枚舌」と言
わざるを得ないと感じている。
なぜなら、本来は介護職員が従事する介護保険サービスのみに設定されている処遇
改善にかかる加算なのだから、介護職員が従事していない居宅介護支援事業者に
それが設定されていないことは不自然でも何でもない。
事実、訪問看護や訪問リハビリ、福祉用具事業者にこの加算は設定されていない。
それなのに、「他の介護保険サービス事業者には加算があるのに居宅介護支援事業者
にその加算が無いのは不公平だ」とか「ケアマネジャーの賃金向上のためにはその
加算が必要だ」とか言っている。
つまり、他の介護保険サービス事業者と同等の扱いを求めているのである。
一方で、居宅介護支援費の自己負担導入については、「居宅介護支援事業は、他の
介護保険サービス事業とは性質が異なるから同じように自己負担を導入するべき
ではない」と最もらしい屁理屈を並べて反対しているのである。
つまり、他の介護保険サービス事業者と異なる扱いを求めているのである。
公的な制度の設計において、自分達の都合に合わせて他の介護保険サービスと同様
に扱うとか性質が異なるものとして扱うというようにコロコロと扱いを変えるべき
ではないし、そんな制度は信用されない。
そもそも、この手の人たちの主張には大きな誤りがある。
”加算”というものは、給与所得でいうところの”手当”と同様の存在である。つまり
抜き差しが簡単にできてしまう性質のものだ。実際にこれまでにも多くの”加算”が
生まれては消えていった。
こんな不確実なものを持って、生活の基盤となる賃金の安定化を図るなど、正気の
沙汰とは思えない。賃金改善を本気で訴えるのであれば、基本報酬の引き上げ以外
にはないはずだ。でもそのことを主張すると多くの反対にあってしまい、その反対
を押し切るだけの根拠を見出せないので、加算という誤魔化しで自分の主張を正当
化しているにすぎない。
さらに言えば、居宅介護支援事業を他の介護保険サービス事業とは性質が異なると
して自己負担の導入に反対している人たちは、ケアマネジメント業務のことを行政
サービスと勘違いしている(幻想を抱いている)。介護保険サービスは、言わば民営
に実施主体の機能を移行した社会保険サービスであり、マネジメント機能も行政が
直接手掛けるものではなくなっている。
建築する際に事前に設計する。そしてそれぞれに料金が発生する。自分で設計する
人も稀にいる。ただそれだけのことだ。
この手の人たちの浅知恵で急場しのぎのその場の思いつきに付き合っていたら、
制度そのものが崩壊してしまうと心の底から心配している。
