少子化の一因ともなっている未婚や未出産の方々が増えることによって、高齢に
なった場合に身寄りがほとんどいない独居生活の方が増えることになる。
結婚や出産は個人の自由であるし、そうしたくてもできない方々もいる。また、
女性の社会進出やLGBTの認知度はさらに加速されていくべきと考えているため、
そのこと自体を問題とするべきではないだろう。
しかし、こうした状況にある方々の支援に携わるときに苦慮することがある。
その一つは『医療侵襲(しんしゅう)行為の同意』についてである。
医療行為としての侵襲とは、手術などによって体を切ったり、薬剤投与によって
体になんらかの変化をもたらす行為などを指す。
一般的には、生命維持の危機を回避するために体に何らかのダメージを与える危険
を伴う治療が施されるため、例外はあるものの本人の同意に基づくことが原則と
なる。
そのため、認知症状などによって同意に必要な判断能力が十分にはなく、本人の
代弁者となる家族がいない場合には、必要な医療行為が受けられなくなる場合が
発生してしまう。
このことは、数十年前から何度も議論されているところであるが中々解決策が導き
出されていない。
私も、担当していた身寄りのいない認知症状が重度化していたご利用者が入院
して、医療処置が必要となったときに医療機関から同意できる人を用意するように
求められ非常に困ったことがある。
その方は、市長申し立てによる成年後見制度を利用しており、家庭裁判所から指名
を受けた弁護士である『後見人』がついていたが、法的に同人には同意権がない。
その件を行政に相談してみても「行政が医療機関に対して医療行為の実施の有無に
ついて介入することは難しい」との返答しか得られず途方に暮れた。
結局、法的拘束力を全く持たない私が『見とどけ人』のような位置づけでしかない
ことを前提として同意し、必要な医療処置を実施していただくことになった。
当然このことは、行政にも後見人にも事前相談と事後報告を行ったが、『綱渡り』
としか言いようがない対応のやり方である。
それでは、こうした社会的な問題をどう解決すべきなのだろうか。
少し長くなったので、続きは明日に持ち越したい。