北海道江別市でケアプランセンター、小規模多機能ホーム、デイサービス、訪問看護ステーションを運営するみのりの丘グループ

みのりの丘

みのりの丘代表ブログ

野生のライオンのようなリスクは必要ない

2021.2.16

今年4月の介護報酬改定でメインテーマの一つとなっている『科学的介護』の目玉

商品に『オムツ生活からの脱却』がある。

 

誰しも「不自由生活」より「自由な生活」を望むものであり、理想とする生活を

目指すものである。

車いすを利用せずに、自分の意志で自分の足で行きたい場所へ移動したい。

施設を利用せずに、住み慣れた自宅で気ままに過ごしたい。

気の合う人と会っておしゃべりを楽しみ、好きなものを好きなタイミングで食べ

て、寝たいときに寝て、風呂に入りたいタイミングで入浴したい。

 

こうした当たり前の生活を介護が必要な状態になっても続けることができるように

計画を立てて支援を実践することが我々の務めだ。

そして、こうした計画を立てる場合に我々が念頭に置くことは『自律支援とリスク

軽減』である。

野生のライオンは、自立して生き抜く力をつけるために我が子を崖から突き落とす

という話をよく聞く。困難な状況に置かれた時に打開するための気力・体力・知力

を身に着けるために行うと言われるこの行為であるが、当然のことながら大きな

リスクを伴う。

崖から落ちた時に命を落とすかもしれない。また、崖から這い上がることができず

餓死するかもしれない。

 

筋力やバランス力が著しく低下している方にとって、車いすを使わずに移動する

ことは転倒の大きなリスクとの戦いとなる。

そのため、筋力やバランス力を向上するためのリハビリテーションを実施したり、

時間や場所を限定して車いす以外の手段を使って移動したりできるように計画し

ご本人の意向とリスクのバランスを図ることがある。

 

昨年、『オムツゼロ』を宣言している十数か所の施設を見学した。

多くの施設に共通していたことは、「鼻が曲がるのではないかと思うほどの便臭と

尿臭が施設に充満していた」ことである。

おそらく、それらの施設でオムツを着用している方はいらっしゃらないのだろう。

しかし、失禁していてもタイミングよく交換することができず、しばらくは便や尿

で汚れたままの状態で過ごすこととなり、その匂いが下着から衣類に移り、果てに

は居室全体に広がってしまっているのではないだろうか。

 

介護を必要とする高齢者は野生のライオンではない。

また、きれいな状態で過ごす権利を有している。

 

我々は、『科学的介護』の暴走によって、受けることができるはずの権利すら受け

ることができなくなってしまうようなことがないよう肝に銘じる必要がある。