ビジネスパーソンにとって『コミュニケーションスキル』は、習得しなければなら
ない必須アイテムの一つではないだろうか。
顧客や取引先、職場内で円滑な人間関係を築き、効率よく有効な業務を進める上で
コミュニケーション技術はとても重要な要素と言える。
そのため、多くのビジネスパーソンは、技術を習得すべく様々な研修や講座を受講
して、スキルアップを図る努力を重ねている。
私たちが日ごろかかわっているご利用者の中には、認知症状の進行や言語を含めた
コミュニケーション機能に障がいを持ってしまったために、コミュニケーションを
円滑に行うことが難しい方がいる。
そのため、私たちは高度なコミュニケーションスキルが要求されると考えている。
ところが、この業界に身を置いて30年近くたつが、他業種と比較してコミュニ
ケーションスキルが際立って高いとはいいがたい状況にあるように感じている。
営業職が相手の懐に入るために使う『営業トーク』を医療や介護の業界人が意図的
に使う場面をほとんど見たことがない。
また、状況に応じて会話の質や表情、声のトーンを変えるという行為もほとんど
行わず、『一本調子』で対応することが多く、その対応が適切と考えている業界人
がかなりいるようにも思う。
そういった人たちは、「感情をコントロールする」ことと「感情を出さない」こと
の違いを全く理解していないのではないだろうか。
さらには、顧客(ご利用者や患者)とのかかわりが長くなると、身内であるかの
ような錯覚に陥って、無用に馴れ馴れしく接する人たちも多くいる。
親子以上の年の差の他人に「タメ口」をたたかれ、時には命令調で言葉を浴びせら
れて喜ぶ人などいるのだろうか。
年がかなり下の傲慢な態度をとる医者と接した時には、「こいつ医師免許がなけれ
ば、叱り飛ばしてやるところだが・・・」などと思うことはよくある。
ここのところ何度も耳にする『高齢者施設等で虐待が発生している』原因は、報道
等で取り上げられている「過度なストレスや重労働」よりも、高度なコミュニケー
ションスキルが要求される現場で未熟なコミュニケーションスキルしか持ち合わせ
ていない者が対応することによって起きているのではないかと感じている。
私たちの業界に身を置くものこそ、コミュニケーションスキルの向上が重要なので
はないかと常々思っている。