ここのところ、ヘルパー(訪問介護)事業を運営している方々からの悲鳴がよく
聞こえてくる。「人(スタッフ)が集まらない!集めたくても魅力を伝える材料が
少ない!スタッフの高齢化が進んで来ていて長期的な運営が厳しい!」などなど。
おそらく、こういった状況は多くのヘルパー(訪問介護)事業所が抱えている課題
なのではなかろうか。
しかし、国もこういった状況を全く知らないわけではないはずなのに、今年4月の
介護報酬改定の内容を見ても、同事業を救済しようという考えは見当たらない。
介護保険制度がスタートした当初は、「ヘルパーあっての介護サービス」ともては
やされ、事実ヘルパーさんたちは懸命に介護保険サービスの下支えを行ってきた。
「いきなり梯子を外された」と感じている事業者も多くいるのではないだろうか。
ではなぜ、「梯子を外す」ようなことが起きているのだろうか。
一般的なヘルパー(訪問介護)は、基本的に予め決められた支援内容に対して、
決まった曜日や時間に自宅訪問して支援にあたる。
そのため、ご利用者が認知症状や精神疾患等によって日課や週間のスケジュール
管理が難しいと、適切な支援を有効な形で受けることができなくなってしまう。
また、余暇支援は保険の対象外サービスと位置付けられているため、日常生活の
流れの中で統一した支援を受けにくい側面がある。
さらに、ヘルパー(訪問介護)の最短のサービス提供時間単位が20分となって
いるため、服薬の確認といった数分で完了する支援を単独で組込むことが難しい。
そして、通所系サービスや短期入所系サービスの利用ニーズが発生した場合には
ヘルパーサービスからのつながりや連続性が乏しく、改めてサービス調整を行う
必要が高い。
こうした問題は、ヘルパー(訪問介護)事業者が悪いわけではなく、制度設計が
そのようになっているので、ヘルパーさんたちの努力ではどうすることもできない
わけであるが、国もこうした問題を解決しなければならないと考えていて、その
結果として生み出されたのが『小規模多機能型居宅介護』という事業であろう。
ところが、当ブログの『小規模多機能型居宅介護の理解』で
国が定義する小規模多機能型居宅介護の「通いを中心に・・」という文言
が同事業の理解を歪めていると思っている。ヘルパー(訪問介護)のニーズがある
からこそ、小規模多機能型居宅介護の能力が如何なく発揮されるのであって、通所
サービスの延長線上にある事業ではない。
つまり、「訪問を中心に・・」と定義したほうが正しいと思っている。
とお伝えしたとおり、
制度設計の担当者が変わるたびに、定義がコロコロと変わってしまう。
そういう意味では、今年4月の介護報酬改定で取り上げられる予定になっていた
『小規模多機能型居宅介護で訪問件数が一定以上の事業所を評価うする加算』が
見送られてしまったことは残念でしかたがない。