前回のブログで取り上げた、令和6年度に控える次期制度改正の最大の焦点となる
『介護保険サービスの自己負担の引き上げ』は、ご利用者側から異論が出ている。
そして、もう一つの焦点となる『居宅介護支援費の有料化』は、事業者側から多く
の異論が出ている。
居宅介護支援とは、ケアマネージャー(以下、ケアマネと呼ぶ)が実施するケア
プランの作成を含めた相談援助のことで、現状ではご利用者の負担金が発生しない
無償の介護保険サービスと位置付けられている。
この『居宅介護支援費の有料化』には、下記にあげるような理由で多くの業界人が
反対の意向を示している。
「ケアプランを有料化すれば、法制度の趣旨を度外視して都合よくサービスを使お
うとするご利用者やご家族が増え、いいなりとなる無能なケアマネも増加し、その
方がご利用者やご家族に選ばれやすくなる。」といったものである。
そして、この意見を正当化するために、「公正中立の立場が危うくなる。」とか
「介護給付費の拡張を助長する。」といった理屈を後付けで唱えているが、端的に
言えば、「有能な私が無能なケアマネにお客さんを取られてしまう」とでも
言いたいのだろう。
しかし、こんなことを考えている時点で「有能?」と思えるし、はっきり言えば
「目くそ鼻くそ、50歩100歩」ではなかろうか。
公正中立や介護給付費の抑制などと言っておきながら、詰まる所は「顧客の取った
取られた」が透けて見える。
そもそも、ケアマネが有能であるか否かといった客観的な指標は存在していない
ため、ご利用者側の主観が評価の基準になってくる。
例えば、「不愛想だけど手術が上手」が名医と思う人もいれば、「手術はいまいち
だけど私の話をよく聞いてくれる」が名医と思う人もいる。
また、自分が今置かれている状況や病状に合わせて主治医を変えることもできる。
一方で、ケアマネは主治医を変更することほど簡単には行われていないことから
考えても不健全な状況にある。
自ら収集した情報等をもとにして、○○事業所の△△ケアマネに支援を依頼したと
いうご利用者やご家族がどれほどいるのだろうか。私見ではあるが全体の1%も
いないであろう。
ご利用者とケアマネは長い付き合いになる。人生のラストステージを担当してもら
う最初で最後の相談援助者となることも少なくない。
だからこそ、ご利用者やご家族が「しっくりくる人を選びたい」と思うことは何ら
不思議なことではない。
もしも、ご利用者やご家族が今までよりもケアマネを変更しやすくなるきっかけと
なるのであれば、『居宅介護支援費の有料化』は一層結構なことだと思う。
また、「いいなりとなるところに顧客が集まる」と言う理屈についても大いに疑問
がある。そのことについては次回に持ち越すこととする。