『厚生労働省は28日、社会保障審議会の分科会で、給付費の適正化につなげる施策の一環として、区分支給限度基準額の利用割合が高く、かつ、訪問介護がサービスの大部分を占めるケアプランを作っている居宅介護支援を事業所単位で抽出していくことを今年10月から導入される新たなケアプラン検証制度として導入する。』
との報道を見て思うこと。
介護保険制度では、要介護度によって1カ月当りに保険適応されるサービスの利用
上限枠が決められている。この枠を超えてサービスを利用することは可能であるが
超えた分については保険適応されないため10割の負担がご利用者に求められる。
そのため、ケアマネージャーは極力同上限枠を超えない範囲で必要な介護サービス
が利用できるように毎月給付額の管理を行う。
しかし、今回の施策は、「同上限枠を超える前の段階で監視を強化しよう」という
内容で、ターゲットとなっているのは“訪問介護(ヘルパーサービス)”の利用割合
についてだ。
なぜこんなピンポイントで監視を強化しようとしているのか。その背景には、介護
保険財政のひっ迫を緩和する目的で、国にとって「金のかかる特養老健」をやめて
「金があまりかからない有料老人ホーム」、さらに「もっと金がかからない外部
在宅サービス利用型の有料老人ホーム」を量産しようとしたところから始まる。
通常の高齢者介護施設は、施設に所属する看護・介護スタッフがご利用者の身の
回りの支援を行う。しかし、外部の在宅サービス利用型の有料老人ホームは、施設
に所属する看護・介護スタッフを置かないため、ご利用者の身の回りの支援は、
外部の訪問看護や訪問介護が担う事となる。
“外部”というと「よその人」というイメージを持つ方も多いと思うが、その実情は
施設に併設する訪問介護事業所が施設に所属する介護スタッフの如く、入居して
いるご利用者の身の回りの支援を行うのである。
ご利用者の状況にもよるが、日常的な身の回りの支援を必要としている場合には
毎日複数回の支援を要するため、訪問介護の出動頻度は相当量になる。
結果として、1カ月当りに保険適応されるサービスの利用上限枠の大部分を訪問
介護が占めることになってしまう。
この様に言うと「有料老人ホーム側があくどいことをしている」と思う方がいらっ
しゃるかもしれないが、国も十分に想定していた経営戦略の一つである。
また、「不必要な訪問介護サービスをご利用者へ押し付けている」という方もいる
が、実のところは不必要なサービスを押し付けるどころか無償サービスにせざるを
得ないほど有料老人ホーム側が負担していることの方が圧倒的に多い。
「介護保険財政のひっ迫を緩和しよう」と目先の金にとらわれて、初めから無理が
あるタイプの施設を施策した厚生労働省の浅はかさがなせる業である。
そして「監視を強化する」とは恐れ入った。