『岸田文雄首相が重要施策に位置付ける公的価格の抜本的な見直しによる介護職の賃上げについて、全国介護事業者連盟が12日に政府へ要望書を提出した。
継続的で十分な賃上げに欠かせない財源の確保策に言及。現行で40歳以上となっている介護保険の被保険者の年齢を、新たに30歳以上へ引き下げてはどうかと提言した。保険料を徴収する範囲を拡大し、その増収分を介護報酬の引き上げの原資にするという考え方だ。
ただ若い世代、子育て世代の負担を更に重くすることには慎重論が根強い。同様の意見は過去に何度も出ているが、政府は採用を見送り続けてきた経緯がある。』
との報道を見て思うこと。
そもそも、なぜ介護保険の被保険者が「40歳以上」となったのか。
基本的に介護保険制度は、介護保険サービスを利用する方々を「加齢に伴う疾病や
障がいにより自律した日常生活を営む上で公的支援を必要とする。」との想定で
制度設計されている。そして、大昔から初老期を40歳からとしていることから
その年齢に決まったらしい。
元来『初老期』があいまいに定義されていたことに加えて、平均寿命が延びている
昨今において介護保険の被保険者を40歳と規定することには大いに無理がある。
それを更に10歳前倒しするというのだから『無理筋の上塗り』であろう。
全国介護事業者連盟とかいう団体は、自分らの利益しか考えていないのだろうか。
介護保険の被保険者年齢を引き下げる議論を進める上では、若年者層にも関連が
ある『障害者総合支援法』との関連性を無視することはあり得ない。
介護保険制度の財源確保のためだけに被保険者年齢を引き下げるなど論外中に論外
である。
当ブログで何度も指摘しているように、介護保険制度の永続性を求めるのであれば
経済的弱者であり、介護保険サービスを利用する可能性が極めて低い若者に負担を
強いるのではなく、介護保険サービスを利用している方やその可能性が高い方から
多く負担してもらうべきであろう。
「低負担高福祉」から脱却し、「低負担低福祉」、「高福祉高負担」とする必要が
あるだろう。
しかし、全国介護事業者連盟としては、「大切なお客様を敵に回す」ことは口が
裂けても言えないので、若い世代に負担を強いることを主張しているのだろう。
ただ、介護事業者の一員であり経営者でもある私から言わせてもらえば、同連盟は
事業の担い手である多くのスタッフが30代であることを忘れてるのではないか。
ただでさえ所得が低いと揶揄されるこの業界へ、負担が増した状況で担い手になり
たいと考える若い世代が増えてくれるだろうか。
担い手であるスタッフをないがしろにしたサービスに未来など無い。
余談ではあるが、50歳を超えると「初老だな」と感じる自分がいたりもする・・