昨日、当ブログ『担い手不在のサービスなどあり得ない』で「介護保険の被保険者
の年齢を新たに30歳以上へ引き下げる提言を行った全国介護事業者連盟」という
団体の提言に対して懐疑的な内容を掲載した。
おそらくは、同団体に対して同様の批判が多く寄せられたのだろう。同団体代表者
名で「介護職の賃上げに向けた要望書で我々が本当に伝えたかったこと」との記事
が掲載されていたが、その中身を読むと、ますます同団体の存在意義や代表者の
見識に疑問を持った。
同記事の中で同意できそうなところは、「賃上げの対象を介護職員のみに限定した
り、細かい配分ルールで束縛したりするのをやめて欲しい」という部分くらいで、
あとは社会保障制度やソーシャルワークへの理解が著しく不足していると認識され
るような内容ばかりであった。
その一部を紹介しよう。
『~前略~ 介護報酬を削減しよう、あるいは利用者負担を引き上げよう、という動きが一層強まりかねません。結果、経営的に追い詰められる事業所が更に多くなったり、サービスを受けられない高齢者が一段と増えたりする事態を招くでしょう。』
これは、「高齢者は弱者で若者が強者」と思い込んでいる方々が良く主張する典型
例である。当ブログで再三指摘しているが、経済的側面のみを見ると高齢者は若者
と比較すると圧倒的強者である。
また、単一の社会保障制度の中で低所得者対策も同時に語ってしまう典型例でも
ある。このことも当ブログで再三指摘しているが、各種社会保障制度と低所得者
対策はリンクすることではあっても同一のものではない。それを「高齢者だから、
弱者だから」などと論点をずらしてしまうと制度そのものがブレブレになる。
さらに、低負担高福祉を維持しようと考える方々が良く主張する典型例でもある。
介護保険制度においても、低負担・低福祉をベースとして、より高度な福祉は自費
とすることで、より多くの方が福祉の恩恵を受けることができると思うし、事業者
だけが担い手となるのではなく、インフォーマルな社会資源も活用することで多く
の社会的ニーズにこたえることもできる。
結果として事業者が淘汰されていくことは必然であり、そもそも初めから風呂敷を
広げすぎただけのことである。それなのに、若者へ負担を強いて事業者を存続させ
ようなどと考えること自体どうかしている。
介護事業者の端くれとして言わせていただければ、同団体の意見は介護事業者の
総意では全くない。
同団体の代表者は、コンサルティング会社社長として立派な経歴をお持ちなのかも
しれないが、十分に介護事業者の意向を汲み取っていないのに総意であるかのよう
に語るのはいかがなものか。