北海道江別市でケアプランセンター、小規模多機能ホーム、デイサービス、訪問看護ステーションを運営するみのりの丘グループ

みのりの丘

みのりの丘代表ブログ

介護保険は応益負担か?(その1)

2021.11.25

「介護保険サービス費の自己負担額が増額される」といった話題に対して、「弱者

を切り捨てる!高齢者を見捨てる!」との反論をよく耳にする。

そして、その反論には「介護保険制度は『応益負担』だから経済的弱者にやさしく

ない」と解説されることが良くある。

 

しかし、この解説を聞くたび、「この制度は本当に『応益負担』なのだろうか?」

との疑問が生じる。

 

応益負担の対義語となる『応能負担』とは、受けたサービスの大小にかかわらず

収入に応じて支払う金額が設定されるシステムのことをいう。

つまり、所得が低いと低額、所得が高くなるにしたがって高額の負担をサービス

提供を受けた方に求めるというもので、「所得税」がこのシステムを取っている。

このシステムは、低所得者や経済的な弱者にやさしく、お金がある人にはしっかり

負担してもらおうというもので、旧来の社会福祉制度はこの方式を取ってきた。

 

一方で『応益負担』とは、受けたサービスに対して皆が同額を支払うシステムの

ことをいい、その代表的なものが「消費税」であろう。

消費税は、金持ちだろうが貧乏だろうが、同じ値段の同じ商品に対して同額の税金

を支払うため、経済的弱者にやさしくない税制度と言われている。

 

それでは、なぜ介護保険制度導入時に低所得者等にやさしい『応能負担』ではなく

『応益負担』のシステムを採用することになったのだろうか。

 

応能負担というシステムは、全体の支出額がさほど大きくないときには効力を発揮

するとても優れたものである一方で、支出額が膨大な量になってくると様々な問題

が生じて、制度そのものの存続が難しくなる危険性を持っている。

財源に対してサービスを利用する方が少なければ、そもそも大きな負担を強いられ

ることはないため、所得が高い方でも負担額はそれなりの金額設定にすることが

できる。

しかし、医療保険や介護保険のように多くの国民がサービスを利用する場合に

おいては、全体の支出額が膨大な量となってしまうため、支出に見合った財源を

確保することで精一杯となるため、自己負担額も大きくなってしまう。

ただでさえ大きな負担を強いられているのに、所得が高いからと言ってさらに多く

の負担を強いられることになれば、どうなるだろうか。

 

介護保険料は地域によって金額に違いはあるが、高額の方だと月額1万円以上の

支払いがあり、日増しに支払額が高騰してきている。

将来、年間数十万円の保険料を支払ったうえに、いざ介護サービスを利用した

ら、8割9割の自己負担を求められた。などと言うことになれば、「バカバカしく

て、そんな保険になど入っていられない」という人が続出しても不思議ではない。

介護保険は原則強制加入であるため、一部例外はあるものの「私は払いたくない」

といっても通用するものではないが、度が過ぎると訴えを起こす人や海外への移住

計画する人、所得隠しを画策する人などが続出する可能性がある。

結果として、必要な財源を確保することが難しくなるばかりか、制度の理念がブレ

ブレとなり、国民の多くから支持されない社会保険制度になってしまう。

 

そういった背景を踏まえて、介護保険制度導入時には『応益負担』を採用すること

になったと言われている。

しかし、介護保険制度の実情と照らし合わせると消費税のそれとはかけ離れた状況

にあるように思え、ほとんど『応能負担化』してきているように感じる。

 

少し話が長くなってきたので、続きは次回に持ち越そう。