北海道江別市でケアプランセンター、小規模多機能ホーム、デイサービス、訪問看護ステーションを運営するみのりの丘グループ

みのりの丘

みのりの丘代表ブログ

介護保険は応益負担か?(その2)

2021.11.26

前回の続き

 

「介護保険制度の実情と照らし合わせると消費税のそれとはかけ離れた状況にある

ように思え、ほとんど『応能負担化』してきているように感じる。」

 

介護保険制度を利用する前提として支払う保険料は、「累進方式」を採用している

ため、所得が高ければ支払う保険料も高く設定される。また、介護保険サービス費

の自己負担割合も所得によって1割~3割と段階的な設定となっている。さらには

高額介護サービス費、負担限度額など所得によって負担額が変わる制度がいくつも

あり、制度が改定されるたびにこのような色合いが濃くなっており、このままの

状況を放置しておくと、将来的に自己負担割合が4割5割となることも不思議では

なくなる。

介護保険制度は、施行当初とは大きく変わり、応益負担から旧来の応能負担へ戻り

つつあるように感じる。

 

「応益・応能」いずれにもメリット・デメリットがあり、不平等は存在する。

そもそも万人にとって平等な制度などこの世には存在しない。

しかし、このまま介護保険制度が『応能負担化』していくことは、制度崩壊の

カウントダウンを意味しているように思う。

 

では、どうすることで世界に誇れる日本の介護保険制度を無理なく継続することが

できるのだろうか。

それは、当ブログで何度も主張している「何でもかんでも公的社会保険で賄おうと

する考え方を捨てるべきである」ということに尽きる。

 

予防給付による通所サービスや訪問サービスが無駄だとは思わない。

ただし、それらのサービスも公的社会保険で賄った結果、支援を受けなければ生活

を維持することが難しい方が高い保険料を支払った上に4割5割自己負担しなけれ

ばサービスを利用できないという事態は防ぐべきである。また、財源を確保する

ためだけの目的で介護サービスを利用する可能性が著しく低い20代、30代の

若者からも保険料を徴収することも避けるべきであろう。

 

また、当ブログで何度も訴えている「医学的モデルの要素が強い、運動・栄養・

口腔ケアを呪文のように唱える短期集中改善プログラムである介護予防はこれまで

に優位性のある成果を全く出していない」こともついても考えるべきだ。

一人で運動や体操を黙々とやっている人よりも運動なんか一切しないけど町内会の

行事には必ず参加している人の方が健康でいられるという研究結果がいくつも出て

いる。要するに、「人は人とふれあってこそ、衰えを予防することができる。」

また、「役割がある。居場所がある。人の役に立つ。」といった精神活動が重要

であるということだろう。

 

地域社会を含めたインフォーマルな社会資源がこうした介護予防の受け皿となれる

ように御膳立てすることが国に求められることであり、軌道に乗って地域社会に

お任せできれば、広げすぎた風呂敷を狭くたたむことができて、本当に困ったとき

誰もが安価に公的な社会保険サービスが利用できるようになると思う。

 

北欧の福祉先進国は、日本とは比べものにならないほど消費税や所得税率が高い。

そのため、「老後の貯え」を考える国民がほとんどいないらしい。それは、生まれ

たばかりの時から高額の納税を積み立てているので、いざ社会的保障が必要と

なってもそれなりに高い福祉サービスを受けることができると考えているからだ。

 

日本のように10%程度の消費税負担で「低負担高福祉」を享受しようと考える

ことは虫が良すぎる。

「低負担には低福祉」、「高福祉を求めるのであれば高負担」が大原則であろう。

しかし、日本の国民もそのことはよくわかっているのではないだろうか。

その証拠に、ほとんどの国民が「老後の貯え」を考えている。