先月23日に知床半島の沖合で乗客・乗員26人を乗せた観光船が沈没した事故が
連日報道されている。同事故では多くの尊い命が奪われ、今も多くの方が行方不明
になっている。
亡くなった方へ心よりご冥福をお祈り申し上げたい。
そして、連日の報道で沈没した観光船の運航会社が数多くの不適切な管理体制や
対応を行っていたことが明るみになった。
しかし、私が個人的に気になったことは、連日の報道ではあまり取り上げられて
いない『救命いかだ』の存在についてである。
海は世界中で繋がっている『同じ海』ではあるが、地域によってその特性は大きく
変わってくる。
北海道の海は、海水浴シーズンであっても10分程度海に入っていると唇が紫色に
変色してしまうほど寒いことが多い。そのため、海水浴と言っても水浴び程度に
留めて、水着しか着ていない状態で本気で泳ぐ人は少ない。
何年か前に沖縄県へ遊びに行ったときは、海水浴シーズンではなかったが、夏の
北海道の海よりも暖かく感じた。
事故当時の水温は2、3℃ということなので、海に投げ出された方々は数分と持た
ずに意識を失ったことだろう。
そのため、連日の報道で指摘されている無線が有効であっても、救命胴衣を着けて
いても、沈没して海に投げ出されてしまえば皆助からなかったことに変わりはなか
ったのではないだろうか。
あまり良い例えではないが、この報道を聞いたときに、実際の事故を基に描かれた
映画タイタニックのワンシーンが頭に浮かんだ。氷山があちらこちらにある北の海
で沈没した船から海に投げ出された乗客が木の破片にしがみ付いて救助を待って
いたが、数分もせずに意識を失い海に沈んでいくというシーンがあった。
それほど北国の海は寒い。北国の海を侮ってはいけない。
『救命いかだ』がなければ、命は救えない。
暖かい海しか知らない人には、このことがわからないのかもしれない。