ここ数年の介護保険制度にかかる政策の動きとして、介護職員等の処遇改善を図る
ことが続けざまに施行されており、介護現場従事者の賃金や地位が少しずつでは
あるが向上してきているように感じる。
しかし、そのことに端を発して、介護現場従事者とその政策の恩恵を受けることが
できない職種との間でちょっとした軋轢が生まれることがあると聞く。
「昨今の政策は、現場職員ばかりが優遇されていてズルい。現場がいくら働いても
その労働をお金に換える作業がなければただ働きをしていることと変わりはないの
だから、事務職員も同様に優遇されるべきだ。」
とか。
「労働をお金に換える作業が不必要とは思わないが、現場で働く者がいなければ
お金に換える作業そのものが成立しないので、現場が優遇されるのは当然だ。」
など。
どこの組織(会社)でもよく聞かれる従業者間の論争に、「物を作る人が偉いか、
物を売る人が偉いか」がある。
「売る人間がいても作る人間がいなければ、売る人間の存在価値はない。」
「作る人間がいても売る人間がいなければ、作った物の貨幣価値はない。」
といった具合に。
ちなみに、当方のスタッフは良識のある人たちばかりなので、今までこういった
論争を聞いたことはない。
遠い大昔は、“作る”ことも“売る”ことも一人ですべて行っていたのだろう。
しかし、その後に“作ることが得意な人”と“売ることが得意な人”とが手を組む
ことでより大きな利益を生むことができるとわかってからは『分業』という
考え方が定着していったのではないだろうか。
例えば、
①100の物を作る力はあるが30の物しか売ることができない人
②100の物を売る力はあるが30の物しか作れない人
とがいた場合、①も②も売り上げは30しかない。
しかし、①が作ることに専念し、②が売ることに専念すると2人で100売り上げ
ることになり、等分すると一人につき50売り上げたことなる。結果、それぞれが
20売り上げを増やすことができたことになる。
更に遠い大昔は、衣食住にかかわるすべてのことを一人で行っていたのだろうが、
“効率”が求められる現代社会において、『分業』は人の英知が生み出した結論なの
だろう。
また、政策はそれぞれに目的やねらいがあるので、恩恵を受けることができる人と
そうではない人が出てきてしまうことはある程度仕方がないことである。
しかしそれは、恩恵を受けることができる人の価値が高くて、そうではない人の
価値が低いということではない。
つまりは、誰が偉いとか偉くないではないということである。
目先の損得にばかり目を向けてしまうと、物事の本質や将来的なビジョンが見え
にくくなってしまうことがある。
この手の論争を焚きつけている一部の政治家や団体は何を考えているのやら。