北海道江別市でケアプランセンター、小規模多機能ホーム、デイサービス、訪問看護ステーションを運営するみのりの丘グループ

みのりの丘

みのりの丘代表ブログ

専門家ではなく妄想家

2022.5.26

以前、当ブログで『2024年度の介護保険制度改正に向けた議論で論点となって

いる要介護1、2の方が利用する通所介護及び訪問介護の総合事業への移行』に

ついて自分の見解を述べたが、そこかしこの“専門家”と称する方々の見解を聞いて

思うことがある。

 

早い話が、その専門家の多くが同総合事業への移行を反対している。

反対することは自由だし、その見識が妥当であれば特にいうことはない。

ただ、その多くの専門家の論拠の中で決定的に不足している材料がある。

それは、サービスの受け手となる高齢者は増え続けている一方で担い手となる若者

が減り続けている現状についてである。

 

その多くの専門家は全くと言っていいほど、この点について触れずに自分たちの

言いたいことだけを垂れ流ししている。

彼らの論法は決まってこうだ、「介護保険事業から総合事業へ格下げしてしまえば

サービスの質が低下し、支援を必要とする高齢者の在宅生活が脅かされる。」

 

理想を思い描き、そのことを口に出すことはとても良いことだろうと思う。

ただし、触れたくない現実から目をそらして理想論のみをまるで正論であるかの

ように述べる人は、専門家ではなく妄想家であろう。

現実にある細かな課題を一つ一つ丁寧にクリアしていった結果として、理想が

近づいてくるものである。

 

高齢者介護の現場は、100から110、120と年々サービスをご利用される方

が増えている一方で、担い手が100から90、80と年々減ってきているという

現実に直面している。

日本の人口が年々減ってきているのだから、このことは他の業種にもあてはまる

現実的な問題である。

「仕事は増えるが人出は減らす」は、ブラック企業の典型的な例である。

 

ごく一部の専門家は、人手不足を解消するために外国人労働者を積極的に雇用する

必要があると説いている。確かに日本での就労を希望する優秀で勤勉な外国の方は

たくさんいることだろう。

しかし、どれほど優秀な外国の方であっても日本の文化や風習になれる時間が必要

であろうし、外国の方から支援を受けることになれていない受け手にもある程度の

時間が必要であろう。

 

そのため、介護サービスの量を減らすという意味におけるサービスの質の低下は

待ったなしで避けようがない現実である。

そのことを棚に上げて理想論を語る人は、もはや専門家ではない。

一時的にではあっても、下げざるを得ないサービスの質をどのように補填していく

のかを語ってくれる人が真の専門家であろう。

しかし、専門家ではなく妄想家と呼べる人たちには、残念ながら補填する手立てを

講じる引き出しがない。だから“反対!反対!”と叫ぶしか能がない。

この様な人たちの言動に惑わされてはいけない。

 

当方では、一時的にではあっても下げざるを得ないサービスの質を補填するための

活動を地道に続けている。こうした活動は、手間暇がかかるし目に見える形の成果

を出すためにもそれなりの時間を要する。それでも、我々はこの地道な活動の手を

止めずに進んでいこうと思う。