当方は、事業を開始して11年が経過して、12年目に突入しているところである
が、昨年から今年にかけて、これまでと比較すると飛躍的と思えるほど多くの方
から介護にかかわるご相談を受けていると実感する。
多くの地域の皆様や関係機関からの信頼を得ることができたのかはわからないが、
直向に事業運営を継続してきたことを評価いただいたのだとすると大変ありがたい
ことであり、原動力となった当方スタッフの尽力には敬意を表したい。
しかし、介護業界全体を見回すと、のんきに喜んでばかりはいられないようだ。
江別市内においても、介護の相談窓口となる介護支援専門員が所属する居宅介護
支援事業所の多くが、人材不足により新規の相談受付を思うように行うことができ
ていないらしい。
また、訪問介護事業所(ヘルパーステーション)の多くも、新入職員の確保が難し
いうえに、既存の職員の高齢化によりこれまで同様のサービス提供が厳しくなって
きていると聞く。
当ブログで繰り返し述べているように、介護サービスの受け手となる高齢者は増え
続け、担い手となる人口が減り続けている今、こうした状況を即座に解決する手立
てを見つけることは至難の業であろう。
また、一つ二つの視点から解決に向けた方策を検討するだけでは十分とは言えない
ほど状況は深刻であるにもかかわらず、悪化する事態は待ったなしで迫っている。
だからと言って、立ち止まってはいられないし介護業界の火を消してはいけない
との思いから、「何とかしなければ」と日々考えを巡らせている。
こうした中で、あくまでも一つの考え方として、状況の改善に向けた方法論に、
『多機能サービスの活用』があるのではないかと考えている。
当方では、平成30年から『小規模多機能型居宅介護』、今年の4月から『看護
小規模多機能型居宅介護』の事業を開始している。
多機能サービスは、当ブログで再三に渡って紹介している介護サービスで、改めて
説明すると「居宅介護支援、通所介護、訪問介護、短期入所、(訪問看護)」が
持つ機能を一つの場所で一体的に運営する事業である。
一般的には単体で運営される各事業で、所属するスタッフは単体の事業にかかわる
業務に従事することになる。ところが、多機能サービスの場合は複数の事業を一体
的に運営するため、所属するスタッフは複数の事業にかかわる業務に従事する。
つまり、一人が二役、三役の役割を担うことになる。
このように一体的に運営することによって、単体で運営しているときに生じる非効
率を解消して、スケールメリットを活かすことが可能となり、人材不足の解消に
微力ながら寄与することができる。このことは、ご利用者やご家族にも大いに恩恵
があり、多種のサービスの連続性が担保されることから家族の介護力不足を補い、
複数の手続きや契約の煩わしさからも解放される。結果として、在宅生活の継続率
が格段に向上する。
国もそのことを十二分に理解しており、多機能サービスが有用に機能するための
政策を数多く打ち出している。
ただし、所属するスタッフ一人が二役、三役の役割を担ったとしても、体は一つ
しかないので二倍、三倍の業務量を消化できるわけではない。また、圧倒的に人材
が不足している状況下においては、多機能サービスをもってしても根本的な解決
にはならない。
やはりそうすると、多機能なニーズを抱えている要援護者を介護給付対象として、
通所介護、訪問介護の単発利用をニーズとする軽度の要援護者は総合事業へ移行
することが、正しいとは言えないが妥当な方向性となるように思える。