北海道江別市でケアプランセンター、小規模多機能ホーム、デイサービス、訪問看護ステーションを運営するみのりの丘グループ

みのりの丘

みのりの丘代表ブログ

重度者の集中する政策(その1)

2022.6.16

『牛丼チェーン大手の店舗で夜勤をしていたスタッフが朝方に倒れて亡くなったことを受けて、医療職、介護職、福祉職でつくる労働組合の「なくせワンオペ!プロジェクト」が10日に声明を発表した。労働組合は今回の死亡事例について、「もしワンオペ夜勤でなければ救えた命だったかもしれない。深夜労働は日中と違い、誰かとすぐに連絡がつく時間ではなく、体調不良になっても助けを呼びづらい」と指摘。「介護・福祉の現場では、職員の命だけでなく利用者の命にも直結する課題」と強調し、介護報酬などの引き上げを重ねて訴えた。』

との報道を見て思うこと。

 

介護事業を経営する者であれば誰でも、スタッフやご利用者の生命を守ることを

最優先に考えていることだろう。そのため、組合の主張に対して「その通りだ!」

と思う方も多くいると思う。

しかし、この手の組合の主張を聞いていていつも思うことは、「現実を全く理解し

ていない中で耳障りの良い絵空事ばかりを言って、かえって介護現場を混乱に陥れ

ている。」ということである。

夜勤を2人体制にできるだけの人員が確保できていれば、誰だってそうしたい。

介護報酬を引き上げることで必要な人員を確保することができるのであれば、そう

してもらいたい。

 

以前に当ブログでお伝えしたことではあるが、江別市内の居宅介護支援事業所や

訪問介護事業所の人員不足は、はっきり言って悲劇的な状況に陥っている。

江別市内では、毎月100件近い介護相談を受け付けているが、対応できる事業所

が極めて限られているため、その事業所へ相談が集中してしまっており、対応可能

な事業所がパンク寸前の状況にある。

また、十分な対応ができていない事業所も手をこまねいているわけではなく、人材

確保に奔走しているが、思うように人が集まらないため、やむを得ず介護相談の

受付を断っている。

介護サービスを受けた後のことをあれこれ語る前に、その前段階の相談すら受付け

てもらえない方が急増する現実が目の前に迫っている。

 

介護保険制度制定後20年が経過した中で、世代交代がうまくいかない介護サービ

ス事業の代表格が、訪問介護事業所である。

この事業は性質上、安定収入を求める若者の就職先として選ばれにくいため、従業

者の高年齢化が顕著となっており、退職者数を充足させるための新規雇用がほとん

ど見込まれない状況になっている。

そのため、5年後に江別市内の訪問介護事業所が半数に減っていたとしても大きな

驚きは感じない。そして、そのことは訪問介護サービスを受けたくても受けること

ができない方が急増することに他ならない。

 

今ある制度の考え方を大きく変えずに人員配置を厚くすることは自殺行為に等しく

何の解決にもならないばかりか、介護保険制度の崩壊を早めることにつながる。

 

それではどのように今ある制度の考え方を変えていけばよいのだろうか。

そのキーワードは、『人も金も重度者に集中する』ことにあるように思う。

話しが少し長くなってきたので、具体的な考え方については次回に持ち越すことと

したい。