北海道江別市でケアプランセンター、小規模多機能ホーム、デイサービス、訪問看護ステーションを運営するみのりの丘グループ

みのりの丘

みのりの丘代表ブログ

重度者の集中する政策(その2)

2022.6.21

前回に続いて、

介護保険制度を崩壊させないために、今ある制度の考え方をどのように変えていけ

ばよいのかについて述べてみたい。

そのキーワードは、『人も金も重度者に集中する』ことにある。

 

まずは、介護サービス事業所に従事する『介護の専門家』の常勤配置義務は、より

重度の方が利用される事業所のみに限定していくべきだろう。

つまり、要支援1、2や要介護1、2のご利用者が大半を占める通所介護サービス

に常勤の専門家を配置する義務を撤廃して、兼務や委託をより有効に活用できる

よう規制緩和し、介護の専門家の同サービスへのかかわりは『困ったときの手助け

や見回り』程度に留め、現状の介護報酬を大幅に減額したほうが良いだろう。

そうすることで、より重度者が利用する介護サービスへ人材や財源を振り分ける

ことが可能となる。

 

しかし、そうした考え方を実現するためには準備しなければならないことがある。

国が打ち出す『総合事業における通所型サービス』が上記の考え方に準じている

のだが、同サービスを実施していない自治体がいまだに多くあるだけではなく、

実施している自治体も「うまくいっている」とはいいがたい。

では何故「うまくいっていない」のか。

 

その理由はいくつかあるがその一つには、国が通所サービスに対する固定概念を

捨てることができないことによって、無用なルールやプログラムを押し付けた結果

受け手や担い手のニーズとマッチしていないことにある。

『通いの場』は、『集いの場』であれば良いのであって、医学的アプローチや機能

訓練などを決められた回数利用するといった一定の結果を求めるプログラムである

必要はない。そういったプログラムを必須としてしまうと「専門家のかかわり」が

必要となる悪循環が生まれる。

このことは、当ブログでも紹介した『フレイル予防は地域活動から』でも検証され

ているとおり、運動プログラムの優位性はない。

 

また、単一の『通いの場』で、複数のニーズすべてを網羅する必要もない。

「食事だけに特化する」とか「趣味活動に特化する」といった単一のニーズのみに

こたえる活動内容がいくつもあって、参加する人が自分で選択することができれば

良いだけのことである。それから、通所サービスを利用するもう一つの目的である

家族の『レスパイト』は、総合事業の枠組みから外して自費利用へ変えていった方

が良いだろう。

このやり方は、多機能サービスにおける「宿泊サービス費の自費負担」で既に実践

されている。

 

さらに、通所サービスの枠組みから一歩離れた『集いの場』においては、受け手と

担い手を明確に区分する必要すらない。互いが心地よい集いの場を作るために支え

合い助け合いを行えばよいだけのことで大そうなプログラムや受け手となる人の

定義などは必要ないのである。

 

また、『通いの場』である『集いの場』は、意図的に新設創造する必要もない。

人が集う目的は人それぞれであるが、そこには何らかの情緒的な結びつきが存在

するものである。無用なルールで、その情緒的な結びつきを分断するような活動は

得てして長続きしない。

 

こうした『通いの場』をより有用に運営するためには、まず第一に「国が凝り

固まった頭を柔らかくして通所サービスの固定概念を捨てること」から始める

必要がある。

そして、それぞれの地域にはどのようなニーズを持った方々がお住まいで、どの

ようなインフォーマルな社会資源があるのかを把握する『地域診断』を実施する

必要がある。

そのうえで、行政・民間・地域がどのような役割を担うかを整理して実行に移す。

最低限これだけのことが準備できなければ、『総合事業における通所型サービス』

は実現しないだろう。