『痛み止めのモルヒネを適正量の約100倍処方し、患者を中毒死させたとして、警視庁が東京都国分寺市の「武蔵国分寺公園クリニック」の40歳代の医師の女と、近くの薬局に勤務していた60歳代の薬剤師の女を業務上過失致死容疑で東京地検立川支部に書類送検していたことがわかった。書類送検は23日。
警視庁幹部によると、医師は昨年2月1日、息苦しさを訴えて受診した小平市の男性(当時93歳)に適正量の約100倍のモルヒネを処方し、薬剤師は処方箋に沿ってモルヒネの飲み薬を出し、男性を同8日にモルヒネ中毒で死亡させた疑い。2人とも容疑を認めている。』
との報道を見て思うこと。
とにかく、亡くなられた方のご冥福を心よりお祈り申し上げたい。
そして、当方の複数の事業所でも、服薬に対する介助や支援を実施していること
から、「服薬の事故には十分に注意しなければならない。」と肝に銘じたい。
それにしても、どうしてこのような事故(人が亡くなっているので事故と表現する
ことが正しいのか大いに疑問はある)が起きてしまったのだろうか。
一部有識者の間では、
モルヒネ1%粉1g(モルヒネ含有量10mg)と、 モルヒネ1g(含有量1000mg)を
医師が間違えて処方し、薬剤師がその間違いに気が付かず調剤してしまったことで
起きた事故ではないかという見解がある。
私たちは人間である以上、ミスを100%防ぐことは不可能である。
以前に当ブログでも話題として取り上げたが、「重大なミスを犯す人の特徴は、
自分は絶対にミスをしないあるいは、絶対にミスをしてはならないと強く思って
いる人」に多い。
その逆で「重大なミスに至らない人の特徴は、自分はミスをするかもしれない
あるいは、ミスをすることはあると思っている人」に多いと申し上げた。
ミスをすることが前提にある人は、ミスが起きた時あるいはミスが起きないように
どうすべきかをあらかじめ準備していることが多くあるため、重大なミスにつなが
らない。ミスをすることを完全に否定している人は、自ずとそういった準備が疎か
になってくる。
今回書類送検された医師や薬剤師がどういった人物なのかはわからないが、ひょっ
とすると後者の考えが強かったのではないだろうか。
医療の現場では、医師が自分の所見に基づいて必要な指示をコメディカル等の職種
にオーダーすることが一般的であり、法的にもそのように定めれらている。
あくまでも一般論とこれまでの経験によるところではあるが、問題はこの先にある
ように思う。
たとえ医師免許を持っていたとしても所詮人間である。人間である以上は、ミスを
100%防ぐことは不可能である。
基本的には、医療従事者は医師の指示に誤りがあった場合に、その誤りに気が付く
だけの知識を持っている。
しかし、医師の中には、医師免許を持たない者から間違いを指摘されることを異常
と思えるほど嫌う者が意外と多くいる。また、自分の間違いを認めずに指示を実行
した医療従事者に責任を転嫁する医師も残念ながら結構いる。
結果として、“裸の王様”になっている医師をこれまで嫌というほど見てきた。
こういった状況は、一般社会や会社組織にも当てはまることである。
かくいう私も、当法人で唯一の経営者であるため、“裸の王様”に陥りやすい状況に
ある。
そのため、当スタッフには常日頃から、「私は完璧でもなく、人並みにミスも犯す
し、どれだけ準備をしていてもミスが出てしまうことはある。間違いがあればいつ
でも指摘してほしい。」と伝えている。
そうすると、「理事長また間違えてる~」と小馬鹿にされることが度々あるのだが
私にとってはありがたい指摘である。