北海道江別市でケアプランセンター、小規模多機能ホーム、デイサービス、訪問看護ステーションを運営するみのりの丘グループ

みのりの丘

みのりの丘代表ブログ

ゼロリスクと折り合い

2022.8.1

人が日常生活を営む上で、ましてや便利な現代社会で生活を営む上で、

“ゼロリスク”というものは存在しない。

 

自宅から一歩外へ出ると、事件や事故に巻き込まれる可能性がある。

無論、そういった状況に遭遇しないようにできる限りの準備をして、細心の注意を

払って行動する方が大勢いることだろう。ただ残念ながら、何をしてもリスクが

ゼロになることはない。

それでも私たちは、リスクを承知の上で、ある種の“折り合い”をつけながら生活を

営んでいる。

 

近年その人数は減少傾向にある交通事故による死亡者ではあるが、それでも1年間

で40万人が負傷して、6千人あまりが命を落としている。命はとりとめたものの

大きな障害が残った方や心的外傷に悩んでいる方などを合わせると、交通事故に

よって人生が大きく変わってしまった方は相当な人数がいる。

交通事故は、どれだけ革新的な技術が開発されても、リスクがゼロになることは

なく、流行性のウイルスのように「いつかは治まる」というものでもない。

それでも、「こんな危険な物(車)はこの世から無くしたほうが良い」といった

議論が机上にあがることはない。なぜなら、移動や物流、救助、災害対応など、

私たちの生活にはなくてはならない存在と“折り合い”をつけているからだろう。

 

新型コロナウイルス感染者の死亡者数は交通事故のそれと大きくは変わらない。

また、私たちの生活の中で共存することが認知されているインフルエンザウイルス

によるそれも大きくは変わらない。にもかかわらず、マスコミの騒ぎようの違いは

なんなのだろうか。同様に騒いでいる専門家とかいう輩は、何の目的でどのような

意図をもっているのだろうか。

もしも、新型コロナウイルスの“ゼロリスク”を目指しているのだとすると、他の

流行性ウイルスの対策との整合性が全く取れない。また、“ゼロリスク”を目指そう

にも現状の法制度では不可能であり、仮に実行できたとしても失うものがあまりに

も大きい。なぜなら、「誰一人、一歩も外へ出てはならない。それでも外出する際

は、微細なウイルスも通さない防護服を着用して外では絶対に脱がない。」という

対策を取らない限り、“ゼロリスク”は実現しないからである。

人流を抑制しようとマスクの着用を推奨しようとリスクは1ミリも好転しない。

世の中には、新型コロナウイルス以外の原因で命を落とす危険を抱えている方が

大勢いる。

下手に中途半端な対策を講じたほうが、新たな人災を生むリスクが増えるだけだ。

このウイルスの死亡率や重症化率を見る限り、「共存する」こと以外に道はない。

 

だいぶん昔になるが、担当するご利用者のご家族に「うちのおばあちゃんは、今度

転んだら寝たきりになると主治医に言われたから、絶対に転ばない対策を取っても

らいたい。」と要望されたことがある。

その要望に対して私は、「100%転倒しない最良の方法は、動かないことです。

それでもご家族の意向に反して、ご本人が動いてしまうのであれば、縛り付けて

動けなくすることです。しかしその方法が、最愛の家族であり、意志を持った人間

に対する最良の方法でしょうか。私たちは、ご本人のご意向を尊重しつつ、転倒の

リスクを最大限減らすよう取り組みますがゼロにすることはできません。」と

答えた。

 

政府も国民に対して、誠意をもって説明するべきである。

残念ながら、現政権の「何もしなければ、大きな成功を収めることはできないが、

大きな批判を受けることもない。」との思惑が見え見えである。

現状の“事なかれ主義”を貫き通せば、大きな成功を収めることはできないどころか

大失敗が待っていることだろう。そして、その犠牲になるのは国民であり、最も大

きな被害を受けるのは介護を必要とする高齢者や障がいを持った方々である。