『厚生労働省が7月末に公表した実態統計で、居宅介護支援事業所数の今年4月の直近の状況が明らかになった。前年同月より487ヵ所少ない3万7831ヵ所で2018年のピークと比較すると、今年はマイナス5.58%となっている。一方、居宅介護支援の費用額については右肩上がりが続いている。今年4月は432.04億円。昨年4月(413.99億円)より4.36%伸びていた。事業所数が減少していく背景には、居宅介護支援の中規模化、大規模化が緩やかに進んでいる状況もあるとみられる。』
との報道を見て思うこと。
上記報道では、居宅介護支援事業所全体の事業収入(介護保険サービスの利用者)
は増え続けているが、事業所数は減る続けているので、一つの事業所が担当する
利用者が大幅に増えていて、一つの居宅介護支援事業所に所属するケアマネジャー
の人数が増えて、中規模化、大規模化が進んでいると結んでいる。
たしかに国は、居宅介護支援事業所に所属するケアマネジャーの人数が3人以上で
あれば取得することができる加算(人数以外の算定要件はある)を創設して居宅介
護支援事業所の中規模化、大規模化を後押ししてきた。
しかし実情を見ると、介護保険サービスの利用者が増え続けていることに対応する
だけ、ケアマネジャー業務に従事している人数は増えていない。
つまり、上記の報道から読み取れることは、『運営母体や人員数等の事情によって
閉鎖する事業所が増えている』ことと『ケアマネジャー1人あたりが担当する利用
者が増えている』ということのように思う。
そのことの裏付けとなる制度の改正行われている。
それは、「1人のケアマネジャーが減算を受けずに担当することができる利用者数
の上限が引き上げられた」という内容である。
おそらくは、閉鎖した居宅介護支援事業所の多くが、1人、2人のケアマネジャー
が所属する“小規模事業所”であっただろうと考えられるが、イコール「中規模化、
大規模化が進んでいる」とはいいがたい。
ただ単に、ケアマネジャー1人1人が、業務過多で“あっぷあっぷ”の状況にある
だけのように思える。
そこで、ケアマネジャーの数を増やすために、「介護職と同様の処遇改善にかかる
加算をケアマネジャーにも創設するべきだ」との声が上がっている。
しかし業界全体から見ると、この考え方は何の解決にもならないように思える。
高齢者介護の業界に身を置く者の数が増えていない中で、いずれかの職種の処遇を
上げればそこに人は集中するが、他の職種に人が集まらず介護事業が成立しない
ことになってしまう。
これから数年先に、「人口が爆発的に増えて介護業界で働く人が大幅に増える」と
いう将来が待っているとは到底思えない。
だから現段階では、『介護保険サービスの利用に該当する者の数を減らす』しか
方法がないように思う。そしてその間に、財源や人材不足を補う方法を考えていく
しかない。