ここのところ続けて、当方が運営する看護小規模多機能型居宅介護事業所に
人工透析を受けている方のご利用依頼がある。
もちろん、介護や看護のニーズがあればお受けすることに何ら問題はないのだが
話を伺うと『人工透析を受けるための移動手段の確保』が主なニーズだったり
する。
体内の老廃物などをろ過する役割を持つ腎臓の機能が低下して正常に体内の浄化を
図ることができなくなった場合などに用いられる人工透析は、医療機関へ出向かな
ければ利用することができない。そしてその頻度は、症状にもよるが週2、3回と
いう方が多い。
そこで課題となることが医療機関への移動手段である。
「公共交通機関を利用すればいいだけじゃないか。」という方もいらっしゃるかも
しれないが、人工透析は非常に体力を奪うものである。そもそも腎臓の機能が正常
に動いていない状態なので健常ではない。そのため、公共交通機関の利用が難しい
方が非常に多い。
「それならタクシーを使えばいいだけじゃないか。」という話になるのだが、月に
15回前後の自宅と医療機関の往復にタクシーを利用するとなると相当額の費用が
必要となってしまう。市町村によっては、通院に係る交通費の助成を受けることが
できる場合もあるが、金額的にみると“雀の涙”と言わざるを得ない。
そこで、医療機関や患者会の有志が無償で送迎するサービスが各所で立ち上がり、
今では透析患者の送迎の主流となっている。
しかしその送迎サービスにも限界がある。
自力あるいは軽介助で車への乗降ができる方であれば対応できるのだが、常時
車いすを使用するなどの要介護状態の方になると途端に対応が難しくなる。
そのような状態になった方が医療機関への移動手段としてよく用いられるのが、
『介護タクシー』である。しかし、このネーミングから誤解されている方が多く
いるように思う。“介護”と名が付くからといって一般のタクシー料金より安いわけ
ではない。一般的な介護タクシーの利用料金は、タクシーメーター料金+介護料金
と設定されていることが多く、とても高い。
そこで、送迎や移乗に係る利用料が別途かからない看護小規模多機能型居宅介護へ
依頼するという冒頭の流れが出来上がる。
他に代替えとなる方法が中々見出せないため、こうしたニーズもお受けしていく
必要があると思う反面、多機能サービスの本来あるべき姿とはかけ離れているよう
にも感じている。
人工透析を必要としている要援護者が急増している昨今、こうした状況が大きな
社会問題となっている。
そして、こうした社会的な課題を問題提起して、解決に向けた活動を続けていく
はずの社会福祉士がほとんど機能していないこともまた問題と感じている。