ここ数年、『介護現場における生産性の向上』が話題にあがることが多い。
生産性の向上については、多くの人が理解していることであり、当ブログでも何度
か解説したことがあるため、その内容の説明は割愛する。
なぜこのことが繰り返し話題にあがるかといえば、「深刻な人材不足にあって効率
的に業務を進めなければ現場が回らなくなるにもかかわらず、一向に生産性の向上
が図れていない。」からである。
それにしても、この「生産性の向上が図れない」って、介護現場やこの業界特有の
現象なのだろうか。
我が国では「楽して○○○」を戒め、「苦労は買ってでもする」を称賛する傾向が
強いように思う。そのためか、もっと安楽に実行することができるようなことでも
あえて難しく手間暇をかけて実行しようとしているのではないかと思われる場面に
遭遇することが多くある。
我々の業界は、介護保険制度を基に事業を運営しているわけだが、この制度は他の
法令と同様に俗に言う『霞が関文学(文法)』が多く用いられているため、不慣れ
な方にとっては読解することが難しい内容となっている。そのため、内容を確認し
て事業運営を行う前に“読解する”ことに多くの時間を取られてしまう。
もっとわかりやすく簡単に書くこともできるはずなのに、国は改善する気など一切
ないだろう。
毎度、「なんて無駄な時間だ!」と思いながら法令や通知の確認を行っている。
また、介護報酬にかかる各種加算を算定する上で、国は事業者に対して様々な計画
や報告の提出を求めてくるが、それらはITを駆使することでいくらでも簡素化する
ことが可能なはずなのに、一から手計算手入力することや同じ内容を繰り返し入力
することが当たり前で、計画や報告を作成するために準備する資料まで存在する。
そしてこれらの作業は、「導入時はひと手間あるけど慣れれば楽になる」といった
類のものではなく、制度が変更になるたびに書式や提出内容が変わり、書式間の
互換性もないため、基礎データを含めて一から入力しなおすことになる。
それも偏に「楽して介護報酬や加算を手にすることはまかりならん。」という発想
から来ているように思える。
ここ最近話題になっている『新型コロナウイルス感染者の全数把握』も異様と思え
るほど非効率で原始的な方法で行われている。
規模の小さな医療機関では、職員総出で夜遅くまで残業して、国へ提出するための
データ入力を行っていると聞く。現場からすると「何に活用されているのか不透明
なこのデータを夜な夜な入力する暇があったら、もっと患者さんを診ることができ
るのに。」と思っていることだろう。
「IT推進の前に、非効率を好む国民性の改革」から始めなければ、生産性の向上は
中々定着しないように思える。