先日、厚生労働省より『介護現場における文書負担軽減等に向けた取組の周知』の
通知が届いたので、内容を確認したが中身を見て仰天した。
その通知内容をみると、これまで印刷して申請書類を提出していたものを電子申請
が可能になるというものだった。しかし、介護サービス事業所としての指定申請を
行う上で事業者側が準備しなければならない書類の数は何一つ変わっていないばか
りか、ウェブサイトに事業所情報などを改めて登録することやデータをウェブ上に
あげる手間などが増えていた。
これは、“文書負担軽減”ではなく、単なる“ペーパーレス”の取組でしかない。
つまり、何一つ負担の軽減が図れていないということである。
こんな調子で“文書負担軽減”の名のもと、パフォーマンスありきで他の書類等も
整理されていくのかと思うと本当にうんざりさせられる。
折角デジタル化を進めようとしているのであれば、簡略化できる個所はいくらでも
ある。
たとえば、介護サービス事業所としての指定申請書類の中に『登記事項証明書』と
いうものがある。いわゆる登記簿謄本は、法人が予め法務局に登記した内容を証明
する書類のことであるが、登記時に法人番号が与えられるので、行政側はその番号
さえわかっていれば、登記内容を確認することなど簡単なことである。にもかかわ
らず、介護事業者がわざわざ同書類を取り寄せてウェブサイトに添付しなければ
ならないなど、労力の無駄以外の何物でもない。
先週、当ブログの『デジタル後進国の今後』で紹介した、世界のデジタル競争力の
評価項目にある「データの活用」が日本はぶっちぎりの最下位だということが
うなずける。
ちなみに、介護事業者側は何一つ負担軽減されてはいないが、今回の取組で行政側
は大きく負担が軽減されることになる。なぜなら、今までは自分たちが入力しなけ
ればならなかったデータを介護事業者が代わりに入力するのだから大幅な負担軽減
になったことだろう。厚生労働省が、自分達の負担を軽減することばかりに気を取
られていて、介護事業者の負担軽減は二の次になっていることがよくわかる。
「介護現場における・・・」の見出しは、「行政側における・・・」と変更した方
が良いのではないかと思えるほどだ。