当方の運営方針は設立当初から変わっていない。
それは、「ご利用者の生活をみる」である。
介護業界はなまじっか、かかわっているご利用者の多くが病気や障がいを抱えて
いるため、医療的側面のみを重視する傾向にある。
やがて、「病気を治す・管理する」ことが業務に従事する上での主な目的となり、
「どのように生きていきたいか、生活していきたいか」といったご利用者のご意向
が蔑ろになってしまう。
結果として、医療的管理の名のもと、本人の意向を無視した治療を強要されたり、
ベッドに縛り付け、部屋に閉じ込めたりする行為が当たり前のように横行した。
さらに、介護現場では、どちらが医学的な知識をより多く持っているのかを競う
“マウント取り合戦”が始まったりする。
先日、当方のスタッフから中井貴一さんがベテランナースに扮するテレビドラマを
見るように勧められたので見てみた。
なるほど、当方の運営理念と同じようなことを言っていた。
ただそこでも、医学的アプローチを否定しているわけではなかったという点も同じ
と感じた。生活を支える上で、医学的なアプローチは非常に有効なものである。
しかしそれは、生活を支えることが大前提にあって、最も有効な手段が医学的アプ
ローチであればそれを採用するという程度のことでしかない。
残念ながら、医療従事者にも介護事業従事者にも、そのことが理解できていない人
があまりにも多い。いつ何時も「医療優先!」とかほざいている輩には、フローレ
ンス・ナイチンゲールの考え方を一から学びなおした方が良いと進言したい。
目的は“生活する”ことであって、その手段として“医学的アプローチ”がある。
私達の日常はテレビドラマとは違う。医療が主役になることなど無い。
主役はあくまで人でありその人の生活である。