東京商工リサーチが11日に公表したレポートによると、「介護事業者の倒産は
昨年1年間で143件にのぼり、介護保険制度が始まった2000年以降の過去最多
を更新。前年から約8割も増え、これまで最も多かった2020年からも約2割増え
た。」とのことである。
そして、その要因の考察として「感染対策に伴うコストの増大、高齢者のサービス
の利用控え、家族の在宅勤務の定着、国の支援策の終了、人手不足や競争の激化、
昨今の物価高騰」といった記事が挙げられていた。
さらに、同レポートでは『倒産をサービスごとにみると、通所・短期入所が69件で
最多。以下、訪問介護が50件、有料老人ホームが12件、その他が12件となっていて
職員が10人未満の小規模な事業者が、全体の8割超と大多数を占めていた。』と
のことである。
国全体としては減少傾向にある倒産件数が、高齢者介護の業界では逆の現象が起き
ている。その要因は上記の考察に挙げられている事柄ももちろんあるのだろうが、
人口減少が続いて顧客獲得が難しくなってきている業種が多くある中で、高齢者数
が爆発的に増えている高齢者介護業界は顧客獲得が難しくはないはずなのに倒産件
数が増加傾向にあるのはなぜなのだろうか。
介護保険制度が制定された2000年当初は、とにかく介護事業者を一定数まで
増やさなければ、「制度あってサービスなし」となってしまうため、規制を緩和し
それなりの報酬を与えて、少人数で資金が脆弱な集団であっても開設しやすい状況
を作っていたように思う。
そのため、他の業界からの参入や独立して個人開業する者が増えて介護事業者数は
軒並み増えていった。
しかし量産した後求められることは、“質”となる。
言葉は悪いが、「味噌も〇も」、「プロも素人も」開業できていたところから、
本物のプロのみを残す作業が待っている。
つまり、淘汰されていくということである。
そういったことから考えると、介護保険制度が始まって20年が経過した今、介護
事業者の倒産件数が増えることは必然なのかもしれない。上記に挙げられる要因は
ついでに取り上げた程度のことで、本当の要因ではないように感じる。