北海道江別市でケアプランセンター、小規模多機能ホーム、デイサービス、訪問看護ステーションを運営するみのりの丘グループ

みのりの丘

みのりの丘代表ブログ

“優秀か否か”

2023.1.16

近年、介護保険事業に参入してから何かと話題を提供しているSOMPOケアである

が、先日その役員が「施設の状況・環境によって適正な人員配置は異なるはず。

3対1や4対1という画一的な基準で縛るのは現実的ではないし、それでは介護事業の

発展にもつながらない」といった趣旨の主張をしたらしい。

そして、施設の状況・環境の違いについて、「利用者の状態、職員の熟練度、

施設長のマネジメント力」を挙げている。

 

正直申し上げて、言いたいことはよくわかる。

同じ種別の施設であっても経営者のマネジメント能力や運営方針等によっては、

ご利用者の平均要介護度が全く異なることは珍しくない。

重度者を数多く対応している施設と軽度者を数多く対応している施設とでは対応に

かかる手間が大きく異なるはずだが、人員基準は同じである。

そのため、施設によっては、同じ人員基準を守っていても「人手が余っている」

こともあれば「人手が足りない」こともある。さらには、難易度の高いことへ積極

的にかかわったとしても得られる介護報酬が変わるわけではない。

 

また、優秀なケアスタッフは、一人で二人三人分の業務量を熟してしまうため、

スタッフの頭数と業務量を単純に割り算しても適切な数値は出てこない。施設が

どれだけ優秀なスタッフを揃えているのかによって、対応できる業務量は変わって

きてしまう。そして、優秀なスタッフは、所属するその組織からは高い評価を得る

ことができるかもしれないが、人員基準上は一人としか数えられないため、特別

多くの介護報酬が得られるわけでもない。

 

ただしこれって、介護業界だけに当てはまることではなく、医療業界でも長年語ら

れていることで、「優秀な医者が難易度の高い手術を施行しても、やぶ医者が同じ

手技で適当に施行しても医療報酬が同じなのはおかしい。」といった具合に。

 

残念ながら社会保険サービス費は、“優秀か否か”といった数値化が難解な尺度を

必要とする項目が反映されることはない。それに、この業界は何となく「能力は

皆同じ、権利は平等に」と考える人や“優秀か否か”を話題に挙げることを嫌う人が

非常に多いように思う。

そのためか、能力を持った人や企業が失意でこの業界を去っていくことを数多く

見てきた。そして残った人や企業の中には、「やってもやらなくても報酬は一緒

だからとにかく無難に」と言っている一方で、「営利を追求するとサービスの質

が低下する」と最もらしく屁理屈をこねる怠け者が結構いるように思う。

奇しくも、SOMPOケアの役員が訴えた「介護事業の発展にもつながらない」は

この業界の現状を言い得ている。

 

頭数が唸るほどあった昭和の古き良き時代であれば、それでもよかったのかもしれ

ない。しかし、限られた頭数で数多くの業務を遂行しなければならない昨今におい

ては、“優秀か否か”は非常に重要な要素となる。

ただ、数値化が難解であることが評価されにくい難点である。