北海道江別市でケアプランセンター、小規模多機能ホーム、デイサービス、訪問看護ステーションを運営するみのりの丘グループ

みのりの丘

みのりの丘代表ブログ

サイボーグ化を目指すの?

2023.3.9

私たちが日常業務の中で使用している『ケアプラン』は、文字通り計画的にケアを

行うために作成されるものである。

それは、具体的なニーズ(生活上の課題)に対して、目標となる生活像を設定して

その目標を達成するために必要なケア(サービス)内容を計画的に定めるといった

内容となっている。

 

そして、“行き当たりばったり”の対応をすることとは異なるため、そのケアプラン

によって一定の成果が得られたのかどうか、あるいは計画内容の修正が必要かどう

かを定期的に評価することが必須となっている。

 

ここまでのところは、業界内のほぼすべての人が理解しており、その通りに実行

しているので、何ら問題はないのだが、「成果が得られたかどうかの評価の内容」

が大きな問題として指摘されることが多くある。

何が問題視されているのかというと、「その評価に客観性はあるのか、また科学的

な根拠はあるのか」という点についてである。

 

先日、『政府は2024年度に控える次の介護報酬改定に向けて、高齢者の自立支援・

重度化防止などの「アウトカム評価」を拡充する方向で検討を進めていく。』との

報道があった。

政府のこの方針は、上述の問題点を解決していこうとする狙いがある。

 

確かに、国の社会保障制度を運営していくうえで、人によって評価基準や評価内容

が大きく異なることは不適切と言える。そして、こうした問題点を解決していこう

とする考えもよく理解できる。

 

ただし、国からこの手の話題が上がるたびにいつも違和感を覚える。

それは、国が定める評価項目や評価基準があまりにも短絡的で視野狭窄の状態に

あるということだ。

例えばそれは、「90歳でも100歳でも、リハビリを行えば身体機能が向上し、

たくさん食事や水分を摂れば健康になり、相乗効果で生活の多くの課題が解決

する」といった思考に基づいた評価項目や基準になっているということである。

 

残念ながら、人は加齢とともに心身の大部分の機能が衰えていく、それはリハビリ

を受けたからと言って抗えるものではない。しかし、国が定める評価項目や基準の

多くは医療モデルに基づいているため、医療(治療)の最終目標の治癒(完治)を

ベースとして設定している。そもそも加齢は病気ではないといった点からも国が

定める評価項目や基準がミスマッチの状況にある。

 

さらに、人の行動はその人の精神心理状態や社会環境と密接にかかわっている。

心身機能が衰えていく中で、「それじゃダメだ」と言われてリハビリ漬けにされ、

体が受付けなくても無理やり食事や水分摂取を促され、ゆったり過ごしていると

「生活意欲の減退」とレッテルをはられることは、ゴールの無いマラソンを強い

られているに等しく、拷問に思える。

 

国が定める評価項目や基準は、

「年齢を重ね、家庭内あるいは社会における一定の役割を終えたのちに、心身機能

の衰えに向き合いつつも、時に必要な支援を受けながら、残りの人生を穏やかに

そしてマイペースに過ごしたい」との思いを打ち砕く内容となっている。

 

私たちが日常業務の中で使用している『ケアプラン』は、「不自由を感じることが

増えつつも、自分らしく生きたい」との思いに寄り添いながら生活を支えることを

目指しているのであって、医療(治療)の最終目標の治癒(完治)を目指している

わけではない。

国は、人間をサイボーグにでもしたいのか?