北海道江別市でケアプランセンター、小規模多機能ホーム、デイサービス、訪問介護施設を運営するみのりの丘グループ

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みのりの丘代表ブログ

流行りに乗るように言葉が独り歩き

2023.3.16

先日視聴したテレビ番組で、「実業団のスポーツ選手とプロスポーツ選手の違い」

が取り上げられていた。

その中で、実業団のスポーツ選手が、現役引退後に所属する企業から受けた不遇と

苦悩が描かれる一幕があった。

 

実業団は基本的にチームを有する企業の社員が選手となるため、その企業とは雇用

契約の関係がある。一方のプロチームの選手は雇用契約はなく、選手として年単位

で契約するため、契約が切れれば、その会社と選手は関係がなくなる。

選手にとっては、将来が保証されていないプロチームの選手よりも、現役引退後も

雇用契約が継続する実業団のスポーツ選手の方がメリットが大きいと考えられてき

た側面がある。

 

しかし、主に特定のスポーツを仕事としてきた実業団のスポーツ選手にとっては、

例え雇用契約が継続するからと言って、経験がほとんどないスポーツ以外の業務に

従事することは非常に高いハードルとなることがある。

企業側もそういったことを承知の上で雇用契約を結んではいても、社員として機能

しない者を雇用し続けることに負担を感じることが多いと聞く。

 

諸外国でも同様の事例はいくらでもあるが、日本において実業団のシステムが成立

しやすかったのは、『終身雇用やメンバーシップ型雇用』が定着していたことが

大きいのではないかと思う。

 

そして、以前当ブログでも取り上げた通り、深刻な人材不足、国際競争力や生産性

の低下といった課題を解決する方法として、『終身雇用やメンバーシップ型雇用』

から『ジョブ型雇用』への移行が話題として取り上げられることが増えてきた。

 

確かに先の実業団のスポーツ選手の事例を見ても、ジョブ型雇用への移行の必要性

を感じることはあるが、移行するために必要な法整備も国民の意識改革も全く進ん

でいない現状で、流行りに乗るように言葉が独り歩きしてしまうことへの危機感を

覚える。

 

労働者の目線で考えた時、日本では「一つの企業にとどまることが美徳」で「転職

を繰り返すことは悪」ととらえられる風潮が根強く残っているため、気軽に転職

考えることが難しい。

また、「自分の持つ知識や技術で勝負がしたい」と思っていても、統制という名の

もとのマネジメント力ばかりが注目されて、個のもつ能力が正当に評価されない

ことも少なくない。

さらには、「一度失敗した者」への風当たりが強く、再チャレンジの可能性の扉が

非常に狭いため、チャレンジそのものを躊躇してしまう傾向がある。

 

企業側の目線で考えた時、日本の雇用契約にかかわる法制度にも大きな問題がある

と思う。例えば、労働者雇用の大原則に「人事権者は雇用主にある」はずなのに、

様々な法制度や慣習があって、雇用主が正当な人事権を発動できないことが非常に

多い。

前述のテレビ番組で、「仕事も与えず、窓際に追いやり、自主退職を申出ることを

待つ卑劣な企業」という描写があったが、雇用主の一存で解雇することが許されな

い状況下では、このような歪なやり方が起きてしまう。そして、このやり方は労働

者の再チャレンジの芽を摘むことにもつながる。

 

そして何より問題と思うことは、企業と労働者をマッチングする役割を果たさなけ

ればならない人材派遣や紹介を担う企業が全く機能していないことにある。

 

こうした問題に対する整備を進めずに、ジョブ型雇用への移行が独り歩きすると、

企業も労働者も苦労させられるばかりで報われない。

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