来年施行される介護保険法の改正案には、全ての介護施設・事業所に対し、詳細な
財務状況(損益計算書など)を自治体へ会計年度ごとに報告することを新たに義務
付ける内容が盛り込まれている。これは、介護事業者の経営実態を“見える化”し、
より詳しく把握・分析できるようしようとの狙いがある。
さらには、厚生労働省は今後、全国の介護施設・事業所に職員1人あたりの賃金の
公表を求める新たなルールの創設を検討しているようだ。
介護保険サービス事業は、報酬の大部分を公費で賄っているだけに、国民から透明
性が求められることは十分に理解できる。まして、介護保険財政がひっ迫している
昨今において限りある財源が適正に使われているのかは国民の関心事となる。
しかし、そうするといくつかの疑問も浮かんでくる。
たとえば、同じ介護保険サービスを運営している公益法人と営利法人との取り扱い
の違いについてである。
当ブログで何度も取り上げている公益法人の一つである社会福祉法人には、透明性
を求める代わりに税制を含めた様々な優遇措置が講じられている。この度の改正案
は、介護保険サービスを運営している営利法人に対しても透明性を強く求める内容
となっている。そうなると、介護保険サービスを運営している公益法人と営利法人
の違いが益々薄くなってくる。
いよいよ、介護保険サービスを運営している社会福祉法人の存在意義がなくなって
きたと感じる。そういった点についても“メス”を入れなければならないのではない
だろうか。
また、同じく保険財政がひっ迫していて、報酬の大部分を公費で賄っている医療保
険の分野で同様の取り扱いがないことも疑問である。
基本的に医療保険サービスの母体となる法人格は、株式会社等の営利法人のような
営利性は認められてはいない。ただし、透明性と言った点においては公益法人でも
ない限り厳格なルールはない。
言葉が乱暴であることを承知の上であえて言うと、「医療機関の多くがコロナ対策
によってぼろ儲けした」という事実がある。透明性が担保されていれば、不必要に
国費が医療機関へ流れることを防げたのではないかと思ったりする。
国にとって都合の良いところだけ透明性を図るということであれば、国民からの
信頼は得られないだろう。