『ケアマネジャーが担うべき業務の範囲はどこまでなのか? 日本介護支援専門員協会は19日の記者会見で、このテーマを取り上げて議論を呼びかけた。「今は個々の介護支援専門員の努力や裁量によってなんとか成り立っているが、それに依存せずに済む社会システムの構築が必要ではないか」。山田剛常任理事はこう問題を提起した。協会はこの日、全国のケアマネを対象として昨年4月に実施した調査結果を報告。例えば介護に関係ない相談への対応、介護保険以外の行政手続きの支援、入退院時の手続きのサポートなどを、多くのケアマネが行っている実態を改めて明らかにした。』
との報道を見て思うこと。
全く持ってその通りであろう。
ただ誤解されたくないのは、範囲外と思われる業務の取り扱いについて問題提起
したいのは、「やりたくない」とか「面倒だから」ということではない。
法整備が追い付いていない又は曖昧になっている事柄に対して、ケアマネジャーが
担い手が不在という理由で半ば強制的に対応しなければならない”綱渡り”の状態を
改善したいと考えてのことである。
その代表的なものは、当ブログでも取り上げた『医療侵襲行為の同意』である。
医療行為としての侵襲とは、手術などによって体を切ったり、薬剤投与によって
体になんらかの変化をもたらす行為などを指す。
一般的には、生命維持の危機を回避するために体に何らかのダメージを与える危険
を伴う治療が施されるため、例外はあるものの本人の同意に基づくことが原則と
なる。
そのため、認知症状などによって同意に必要な判断能力が十分にはなく、本人の
代弁者となる家族がいない場合には、必要な医療行為が受けられなくなる場合が
発生してしまう。
私も、担当していた身寄りのいない認知症状が重度化していたご利用者が入院
して、医療処置が必要となったときに医療機関から同意できる人を用意するように
求められ非常に困ったことがある。
その方は、市長申し立てによる成年後見制度を利用しており、家庭裁判所から指名
を受けた弁護士である『後見人』がついていたが、法的に同人には同意権がない。
その件を行政に相談してみても「行政が医療機関に対して医療行為の実施の有無に
ついて介入することは難しい」との返答しか得られず途方に暮れた。
結局、法的拘束力を全く持たない私が『見とどけ人』のような位置づけでしかない
ことを前提として同意し、必要な医療処置を実施していただくことになった。
当然このことは、行政にも後見人にも事前相談と事後報告を行ったが、”綱渡り”
としか言いようがない対応のやり方である。
こうした”綱渡り”は、善意で対応していたとしても、場合によっては「違法」と
捉えられることが十分に考えられる。
仕事に誠実で情熱を持っているケアマネジャーであればあるほど、危ない橋を渡る
危険性を含んでいる。こんな状況を長く続けていけば、そういったケアマネジャー
は一人もいなくなってしまい、御用聞きケアマネのみが生き残ることになる。
ケアマネジャーが「やってはいけないこと」を明示したうえで、担い手がいない
場合には「だれがどう対応するのか」を法整備も含めて整理することが急務といえ
るだろう。