『財務省は11日、財政健全化への道のりを話し合う審議会を開催し、社会保障制度の改革の具体策を提言した。介護分野では、サービス付き高齢者向け住宅で暮らす利用者に対するサービスの適正化を注文。いわゆる“囲い込み”をしている事業者がいることなどを念頭に、居宅介護支援のケアマネジメントにも介護報酬の「同一建物減算」を適用すべきと求めた。』
との報道を見て思うこと。
国は、高齢者介護分野における”囲い込み”を是としたいのか非としたいのかが
さっぱりわからない。
はたして、居宅介護支援事業所の介護支援専門員が、同一敷地あるいは同一法人内
にある介護サービス事業所の利用を調整することが”悪いこと”で、他の介護サービ
ス事業所を調整することが”良いこと”なのだろうか。
一般的な消費行動の中で重要視されることの一つに”互換性”というものがある。
例えば、「一つのリモコンで自宅にある全ての家電を動かすことができれば便利」
と考え、同じメーカーの家電を買い求める人がいても不思議ではない。当然その
ように考えることは”悪いこと”であるはずがない。
無論、「メーカーを問わず、自分が気に入った家電を買いそろえたい」と考える人
もいるだろう。当然そのように考えることも”悪いこと”であるはずがない。
当方のご利用者の中にも、「事業所を選んだというよりは法人(会社)で選んだ」
とおっしゃる方が少なからずいらっしゃる。
他の介護サービスニーズが発生した場合に、「これまでご縁があった法人(会社)
内部にある他の介護サービスも合わせて利用したい」と考えることは何一つおかし
なことではない。むしろ自然な発想と言える。
つまり、サービスを利用する側のご意向が尊重されているかどうかが問題なので
あって、”囲い込み”と称されることが問題なのではない。
さらに言えば、利便性やスケールメリットを活かすことができるといった観点から
国が全国に事業者数を拡大したいと考えている「多機能型サービス」は”囲い込み”
の最たる事業である。
その介護サービスのご利用者は、他の居宅介護支援事業所、通所介護、訪問介護、
短期入所生活介護を利用することができない。つまり、同一敷地外の介護サービス
を利用することができない”囲い込み”状態となる。
国も”囲い込み”に一定のメリットがあるとわかっているからこの介護サービスを
推進しようと考えているのだろう。
繰り返し言うが、サービスを利用する側のご意向が尊重されているかどうかが問題
なのだから、そこをターゲットとして健全化を話し合うべきだ。
安易に”囲い込み”をターゲットとすると国の自己矛盾が露呈するだけだ。