前回の続き
長年、ソーシャルワーカーの業務に従事していた者にとって介護保険制度は、待ち
望んでいた希望の光であった。「この制度が機能することで多くの方が救われる」と
信じていたし、今も信じている。
しかしいつの日か、ソーシャルワーカーの中には介護保険サービスを調整すること
が自分たちの役割であり、同サービスを利用しない方は自分たちがかかわるべき
対象ではないと考える者が増えてきているように思う。
さらにいえば、介護保険制度下におけるマネジメントの役割を担う介護支援専門員
の多くが、ソーシャルワークを学ばずして現場で業務に従事している。
介護支援専門員に求められる技術は、『介護技術』ではない。何年もかけて介護の
技術を磨いたとしても、介護支援専門員に求められる対人援助技術やマネージメン
ト能力が磨かれるわけではない。
残念ながら、医療や介護にかかる技術だけを磨いてきた者は、主体的に対人援助
技術を学ばない限り、職に就く過程で介護支援専門員に求められる知識や技術を
習得する機会がない。
求められる技術を持たない専門職を量産して、ソーシャルワークを殺した先に何が
残るのだろうか。
財源を失い、人材を失って有用と思われるフォーマルサービスを維持することが
難しくなる近い将来、信じていたフォーマルサービスを失った介護支援専門員は
どのようにしてニーズに応えるのだろうか。
ただし、ここまでの論調から「相談援助職や介護支援専門員が悪い」と捉えた方も
いらっしゃるかもしれないが、私は必ずしもそうではないと考えている。
なぜなら、相談援助職や介護支援専門員は専門職であると同時に組織の一員であり
企業(法人)に雇用されている立場にある。自分が思い描くソーシャルワークを
実現したいと考えていたとしても、組織の運営方針と合致しない限りは、その考え
が容認されないという事態は当然起こりうる。
また介護保険制度下では、対人援助技術やマネージメント能力を習得していなくて
も、介護支援専門員の資格を取得することができる。有資格者に言わせれば「法に
則って資格を取ったのに、技術や能力がないと言われることは合点がいかない」と
いうことになるだろう。
さらに言えば、介護保険制度は介護保険サービスを調整して初めて報酬が得られる
制度設計となっているのだから、そちらが優先されることは必然であり、報酬を得
ることを優先することは営利企業としては当たり前のことである。
私見ではあるが、今後の介護保険制度の見直しにはソーシャルワークを十分に理解
している有識者の意見をしっかりと踏まえる必要があると考えている。
そうしなければ、ソーシャルワークが死んでしまうことにとどまらず、社会保障
制度も社会保険サービスも死んでしまうことになりかねない。