先週開かれた経済財政諮問会議で今後の社会保障制度あり方が議論された。
当然のことながら、増え行く介護ニーズに対応する介護現場の人手不足にどのよう
に対応していくのかが、議論の中心となった。
そして、これまでと同様に「テクノロジーの活用、事業所・施設経営の大規模化、
保険外サービス事業者との連携」など解決策が提案されていた。
いずれの提案も、より効率的なサービス提供体制を構築する上で重要ではあるが、
テクノロジーの活用、事業所・施設経営の大規模化については、高品質な社会保障
の維持と年金受給者の低負担の維持を大前提としていることから、「やらないよりは
マシ」という程度のことであって、とても解決策とはいいがたい。
例えるなら、大量の水が入ってきて今にも沈没しそうな船で、柄杓を使って水を外
へかき出して沈没を食い止めようとしているようなものである。
この行為で数分数秒、沈没を遅らせることはできても結局は沈んでしまう。
今一番やらなければならないことは、大量の水が入ってくることを食い止めること
に他ならない。
この例えでいうところの”大量の水”とは、介護保険サービスの対象者のことを私は
指している。この先数十年間は、黙っていても高齢者人口が増え続ける。つまり
水は増え続けることは抗うことができず、現実として受け入れるしかない。
問題なのは、その大量の水を沈むことがわかっていながら船内に入れ放題にするの
かどうかであろう。
そこで求められる英断が、介護保険サービスそのものと対象者の絞り込みである。
言い換えるなら、高品質な社会保障の維持と年金受給者の低負担の維持を大前提
から外すということである。
しかし、ここで話を終わらせてしまえば、これまで支援を受けていた方を見放すと
いうことになってしまうが、私はそうあるべきではないと考えている。
そしてそのためには、保険外サービス事業者との連携という狭い領域に限るのでは
なく、広域的なインフォーマル社会資源を機能させることが必須であろう。
社会保障制度の在り方を議論するとは言っても、インフォーマル社会資源の開発を
語らずして議論も何もあったものではない。
政府も官僚も学者も、何でそんな当たり前のことがわからないのかがわからない。
泥船にペンキを塗って奇麗にあしらえたところで、沈んでしまえば一緒であろう。
本質の議論を避けて体裁だけ整えたところで問題は悪化する一方だ。