先日、厚生労働省から事業主宛に「年収の壁対策として助成金を支給します」との
趣旨の案内文が届いた。
労働者不足が深刻化してきている現状を踏まえて、国会では「年収130万円の
壁」を解消する案が議論されているところであるが、「年収130万円の壁」とは
扶養者が会社員の場合、自分の年収が一定の金額を上回るまでは、扶養者の「社会
保険上の扶養」に入ることができるため、社会保険料を払わなくて済むが、年収が
「130万円以上」になると本人が社会保険に加入することになるため、給与から
社会保険料が差し引かれて、手取りが減ることになるという仕組みのことを言う。
今回送られてきた案内文を読むと「社会保険料の支払い分に相当する手当を支給
する取り組みを行った事業者へ助成金を支給する」というものである。
一見すると”より良い取り組み”に見えなくもないが、「差し引かれる社会保険料に
相当する分を国が直接補填することは難しいから事業者を経由して補填しよう」と
いう魂胆が見え見えな政策である。
手取りが減る分を国が補填するなど原理原則を無視した暴論でしかないため、この
ような姑息な手段を講じたのであろうが、はっきり言って「浅はか」としか表現の
しようがない政策である。
そもそも、昭和の古き良き時代の一般的なモデルである「お父さんが会社で働いて
専業主婦のお母さんがパートに出る」といった概念を令和のこのご時世に当てはめ
ようとすること自体無理がある。生き方も働き方も多様化している今を生きている
人たちを大昔の概念に当てはめてもミスマッチしか起きない。
「年収の壁」は”昭和資料館”にでも飾って、今を生きている人たちに合わせてその
壁は完全に取り払うべきであろう。無駄な壁を残そうとするから補填とか助成とか
無理やりな政策が出てくるのである。
一方で、「扶養という考え方があるから少子化を防ぐことができている」という人が
いたりするが、その意見もまた時代錯誤のミスマッチである。
扶養は、例えば子供や高齢者のような就労することが難しい人を対象とするもので
あって、子育てをしている人に当てはめるべきものではない。
今は、「仕事も子育ても両立できるのであればそうしたい」と考えている人がとても
多くいる。しかし「両立に寛容ではない社会の仕組みがあるため、どちらかを選ば
ざるを得ない」として、仕事か出産のどちらかを諦めてしまう人が多くいる。
当ブログで何度か話題にしていることではあるが、両立に寛容ではない社会の仕組
みの代表的なものが「夫婦同姓と年収の壁」があると私は考えている。
古き良き時代から抜け出せず、今を生きていない政治家や官僚がどれだけ議論して
も、少子化対策も労働力不足も解消することは困難を極めるとしか言えない。
年齢性別を問わず、「今を生きている人」を国政に送り出す必要がある。