一般的に人の言動には”目的”がある。
「お金持ちになりたい」と思うのは、「豊かな暮らしがしたいから」とか「老後も
不安なく過ごしたいから」などの目的があり、その目的を実現する”手段”として
財を築くことを考えるのである。
時々、日常会話の中で「社長業は儲かりますか?」とか「どうすればお金持ちに
なれますか?」と聞かれることがある。
そういった質問を受けた場合には、「どうして社長になりたいのか?どうしてお金
持ちになりたいのか?」と問いかけることにしているが、そういった質問をする
方の多くはその問いかけの答えを持ち合わせていない。
つまり、そういった方は「目的意識」を持っていないか、「手段が目的そのもの」と
なっている場合が非常に多いと考えられる。
別段、お金持ちになることが目的でも問題はないし、誰かから責めを負うことでも
ないと思う。ただし、手段が目的化してしまうことには危うさがあると感じる。
なぜなら明確なゴールが見えないからだ。
例えば、「お金持ちになりたい」が目的であった場合に、どこがゴールなのかわから
ないので、どこまでも財を築くことを追求することになる。
始めは真っ当に事業を行って財を築いていったとしても、「もっともっと」という
気持ちが強くなれば、「真っ当な商売だけでは金は稼げない」との思いに行きついて
しまう人も多くいることだろう。その流れから不正や犯罪行為が生まれることは、
決して珍しいことではない。なぜなら、「ルールに縛られず、時に人を欺く」ことに
成功すると財を築く確率はさらに上がるからだ。
私は経済の専門家ではないので、「どうすればお金持ちになれるのか」の問いに対す
る明快な答えは持ち合わせていないが、恐らくは「生産性が高い事業を独占的に
行う」ことができればお金持ちになれる確率は上がるだろうし、「自分で作るのでは
なく人が作った物を利用する」とさらにその確率は上がることだろう。
私が毛嫌いしている『人材派遣・紹介業』はその最たるものだろう。彼らは、自ら
人材を雇用して育成するわけではなく、どこかの企業に属している人材を別の企業
へ”右から左へ移す”ための仲介をしているに過ぎない。
そして時には、「御社が求めている人材を紹介できます」とか言って、ミスマッチな
人材を高額な紹介料で押し付けてくるのである。
こんな事業が大きな財を築けてしまうのだから恐れ入る。
山が高いのは、平地があり谷があるから相対的に高くなる。
お金持ちは、そうではない人たちがいるから相対的に多く財を築いていることに
なる。「自分以外の人から搾取することでお金持ちになれる」のだとしたら、その財
の一部は何らかの形で還元されるべきだろう。
そんな志も目的意識もない者たちばかりが”お金持ち”に成り上がるのだとしたら、
世も末だな。