当ブログでも繰り返し触れている「ケアマネジャー不足」を踏まえて、厚生労働省
は資格試験の受験要件の緩和に踏み切る考え方を示している。
今回示されたのは素案であるため、実際にどんな資格を加えるかや実務経験をどこ
まで短縮するかは今後詰めることになる。
現行の制度では、ケアマネジャーは、保健・医療・福祉に関する法定資格に基づく
業務又は一定の相談援助業務に従事した期間が通算して5年以上である者が、介護
支援専門員実務研修受講試験を受験し、合格後の介護支援専門員実務研修を修了す
ることにより、介護支援専門員証の交付を受けて資格を取得することができる。
昨年、関東の10都県の知事からなる「関東地方知事会」が、介護支援専門員実務
研修受講試験の受験資格を緩和するよう国に求める方針を示した。
その提案内容とは、6年前の介護保険法改定によって除外された『実務経験のある
介護福祉士以外の介護職員』を受験資格要件に復活させることである。
たしかに、この要件を外したことで介護支援専門員実務研修受講試験の受験者が
激減した。そのため、頭数を確保するという観点からこのような提案を出すことは
一定の合理性はある。
しかし、私はこの提案には大反対である。
介護支援専門員に求められる技術は、『介護技術』ではない。何年もかけて介護の
技術を磨いたとしても、介護支援専門員に求められる対人援助技術やマネージメン
ト能力が磨かれるわけではない。
残念ながら『介護福祉士以外の介護職員』は、主体的に学ぶ機会を作らない限り、
職に就く過程で介護支援専門員に求められる知識や技術を習得する機会がない。
度々、介護支援専門員の質が問われることがあるのは、必要な知識や技術を習得し
ていない者でも資格を取得できてしまうからに他ならないと思っている。
つまり、介護支援専門員の受験資格は、対象の資格を拡大するのではなく対人援助
技術やソーシャルワークを学んだ者にのみ与えられるべきだろう。
この件に関するもう一つの話題である「5年以上の実務経験」という受験資格要件
についてであるが、私の個人的な意見としては「全く持って意味不明」である。
どんな仕事でも、人生経験や社会人経験が重要であることは言うまでもない。
ただし、その経験をもって受験するための要件とする資格など他にあるだろうか。
医師、弁護士、教師など社会性や道徳、倫理を問われる国家資格はいくらでもある
が、いずれの資格も「〇〇年以上の実務経験」が受験の要件にはなっていない。
つまり、介護支援専門員の受験資格は、実務経験に関係なく対人援助技術やソーシ
ャルワークを学んだ者に与えられるべきだろう。
厚生労働省が考えている資格要件の緩和があらぬ方に向かっているように思えて
ならないのは私だけだろうか。