多くの業界に共通することではあるが、高齢者介護の業界は慢性的な人材不足に
苦しんでいる。
そしてその状況を打開するキーワードとして『賃金の改善』、『生産性の向上』、
『ロボットやICTの導入』が繰り返し取り上げられている。
これらのキーワードが上手く組み合うことで相乗効果が生まれ、課題の解決や改善
を目指そうと言うことなのだが、厚生労働省の手にかかるとなぜかこれらのキーワ
ードは”ジャンケン”のような関係性になってしまい、相乗効果がうまれるどころか
互いの良さを打ち消してしまい、課題がさらに大きくなってしまう現象がしばしば
起きている。
例えば、厚生労働省はこれまでに『賃金の改善』を目的とした介護職員の処遇改善
にかかわる加算を数多く作ってきた。しかしその加算を算定するためには、煩雑な
事務処理が必要となる。また、その事務処理に必要な書類が加算毎に異なるうえに
紙媒体の提出が求められていた。その結果として、生産性は低下し、ICTの活用の
妨げとなっていった。
処遇改善にかかわる加算を複数の複雑な算定要件などにはせずに、基本報酬に組み
込めば無駄な事務処理が必要なくなり、生産性やICT導入が一気に加速するにも
かかわらず、相も変わらず似たようなことを繰り返している。
やたらと手当を増やして、給与体系を複雑にする我が国の官僚ならではの発想なの
だろうが、こんなことを繰り返していたら一生かかっても生産性は向上しない。
また昨今、介護用ロボットの導入が大きく取り上げらてきているが、その実情は
ロボットを稼働させるための人員が別に必要なため、人員数が減らずにロボット導
入経費が増えるだけなので、賃金を改善する財源がなくなってしまう。
さらには、行政への書類の提出がいまだに紙媒体やFAXという方法が非常に多く
残っておりその方法がコロコロと変わるため、ICT導入に二の足を踏んでいる事業
者も少なくはない。
そんな体たらくを続けているうちに、人材が枯渇してしまうのではないかと本気で
心配している。
厚生労働省の職員を丸ごと入れ替えるくらいの大ナタを振るわなければ状況が好転
することはないのではないかと半ばあきらめの境地にいる。