厚生労働省が、介護保険制度の見直しを議論する審議会で俎上に載せた審査期間の
長期化が課題となっている要介護認定の実情が、直近データの2022年度の下半
期で、利用者の申請から認定までにかかる期間が法律で定められている原則30日
以内を大幅に上回る『平均40.2日、中央値39.4日、最長78.7日』も
かかっていることが明らかになった。
まず初めに申し上げたいことは、民間企業は法律に違反すると罰則が科せられ、時
には営業停止などの重たい処分を受けることもある。にもかかわらず、行政は常態
的に法を破っていても何のお咎めもなく、介護保険制度が開始してからの25年間
特に改善もせずにいるあたりが開き直りとも受け取れる態度である。
法秩序の維持を担う行政が聞いてあきれる。
それにしても何で要介護認定の結果が30日以上かかってしまうのだろうか。
その一つは、申請を受付けてから要介護認定に必要な訪問調査の実施までに時間が
かかりすぎている。この時点で2~3週間経過していることは珍しくない。
本来は保険者が実施することになっている認定に係る訪問調査であるが、人員が
不足しているため、居宅介護支援事業所のケアマネジャーに委託するケースが多く
ある。多忙を極めるケアマネジャーにとっては、通常業務の合間に訪問調査を行い
調査票を期日までにまとめて行政に提出することは非常に重労働である。
保険者が自己完結できていない時点でこのシステムは成立していない。
もう一つは、申請者の主治医が作成する主治医意見書の提出に時間がかかる。
ケアマネジャー以上に多忙を極める医師にとっては、通常業務の合間に意見書を
作成して期日までにまとめて行政に提出することは非常に重労働である。
要介護認定には医師のかかわりが必須であることを主張した医師会の意見が取り
入れられた経緯を考えると自業自得といえなくもないが、現場の医師にとっては
たまったものではないだろう。
個人的に最も罪が重いと感じるのは、申請者の要介護度を最終決定する機関である
認定審査会である。
認定審査会は、保険者から委託を受けた医療・介護・福祉の専門家数名と行政の
担当者で形成されている。そしてこのメンバーが集まらないと審査会は開催できな
いこともあって毎日開催されているわけではない。その時点で無駄に時間が経過し
ている。
そして、この審査会の委員、顔ぶれを見ても『専門家?』と言わざるを得ない方々
の集まりである。そんな方々が出す結論は、ルール無視、専門的視点の欠落、現実
と大幅にかけ離れた内容のオンパレードである。
全く意味がなく、無駄に時間を使う認定審査会を廃止して、AIを活用するだけで
要介護認定の審査期間が大幅に短縮され、精度が大幅に改善されるはずだ。
あとは、デジタル音痴の我が国の行政がAIをうまく活用できるかにかかっている。