「医療ニーズをアセスメントできない福祉職」
「生活ニーズをアセスメントできない医療職」
長年、この業界に身を置く中でよく耳にするフレーズである。
生活全般の支援に対応するケアマネジャーには、医療や経済的な知識、また社会福
祉にかかわる制度、インフォーマルな社会資源に精通していることのほか、対人援
助にかかわるコミュニケーションスキルも求められる。
つまり、非常に幅の広い知識とスキルが要求されるのである。
しかし、一個人がその全てを兼ね備えることは非常に困難である。
生活歴、職歴、学歴、取得している資格などによって、その知識や技術には一定の
偏りが生じるものである。
無論、その偏りを改善するべく努力を積み重ねている人もいるが、30年以上の現
場経験の中で、要求される全ての知識やスキルを過不足なく習得している人を一人
も見たことが無い。
つまりケアマネジャーには、努力を続けたとしても、現実的には知識やスキルに
偏りがあるということを前提とするべきだろう。
だとすると、その偏りをどのようにして補っていけば良いのかという課題があるの
だが、その解決方法は言葉にすると簡単である。
それは「その分野の専門性が高い人と協力、協働、支援を受けながらことにあたる」
ということである。
言葉にすると非常に単純明快なのだが、これもまた長年この業界に身を置いていて
感じることとしては「言葉通りに上手くいかないことが多い」ということである。
なぜ上手くいかないことが多いのかという理由には様々あるが、個人的にはケアマ
ネジメントの本質とは違うことが邪魔をしていることが多くあるように感じる。
それは、職種や職域、所属を守るあるいは優先する思考が強く働くことによって、
その異なる人との協力や協働を阻害してしまうことにあると思う。
これは言葉を変えると「縄張り争い」に近い。
自分の職域が脅かされると感じて、他の職種を排除しようとする動きは今も多くの
場面で目にする。
そこから転じて、「マウントの取り合い」「自己保身による相手への攻撃性」という
非常に醜い争いに発展したりする。
ケアマネジャーに限らず全ての専門職が、「要求される全ての知識やスキルを過不足
なく習得している人は一人もいない」という前提に立てば、こうした思考も少しは
緩和されるのではないかと思うが、専門性が高くなればなるほど「自分は万能だ」
という勘違いや驕りが生まれる気がしてならない。
こうした思考を持つ人を見ていると「何とも滑稽で哀れだ」と感じてしまう。