ケアマネジャーには、「提案する」という大きな役割がある。
ご利用者やご家族の困りごとを把握して、その困りごとを解決(緩和)するために
必要と考えられる社会資源を紹介し、利用を提案する。提案に対する合意が得られ
れば、利用を調整する。
私は、ケアマネジャーには提案する能力=「提案力」が強く求められていると考え
ているのだが、この能力が著しく低いあるいはこの能力を発揮するための適切な
動きを取ることができていないケアマネジャーがあまりにも多いと感じている。
例えば、介護保険サービスを提案することとなった場合、数あるサービス事業の中
で、なぜそのサービス種別あるいはサービス事業所を提案することにしたのかを
ご利用者やご家族にわかりやすく説明できている人があまりにも少ない。
なぜそうなってしまうのかという一つの理由は、サービス種別やサービス事業所に
対する理解があまりにも薄いからである。その典型例は、多機能サービスの提案や
利用調整ができないケアマネジャーが非常に多いことにある。そういう人たちは、
類似する他の介護保険サービスがある中で、なぜ同サービスが当該ご利用者の困り
ごとにマッチしているのかを説明することができない。つまり、サービス種別や
サービス事業所に対する理解が不十分なため、提案できないし、提案したとしても
説得力がないので利用調整に至らないのである。
このような、専門家として適切な提案ができず、ご利用者やご家族の言うままに
社会資源の調整を行う人のことを「御用聞きケアマネジャー」と呼ぶのである。
長年、色んなケアマネジャーを見てきて気が付いたことがある。それは、「御用聞き
ケアマネジャー」と呼ばれる人の多くは、定期のモニタリング訪問以外はほとんど
自分のデスクにどっかりと座り、パソコンとにらめっこしているか電話でやり取り
している。そして、ご利用者の意向を尊重したサービス調整という名の下で、無用
な「お試し利用」を多投するという特徴がある。
どこにどのような社会資源があり、それぞれにどのような特徴や特色があるのかを
自分の目で見て、現場の人から聞き取りをすることをしないので、提案などできる
はずもない。
よく検証もしない、よくわからないものを人に提案することほど非礼はない。
2年後に控える『介護報酬改定』の内容一つに居宅介護支援費に自己負担金を導入
することが取り上げられている。それは、これまでは無料で利用することができた
ケアマネジャーによるマネジメント費用が有料になることを意味している。
そして、この導入にあれこれと屁理屈を並べて猛反発しているケアマネジャーが
多くいるが、そのほとんどは「御用聞きケアマネジャー」とその取り巻きだ。
そりゃ~反発するだろう。
市場の原理に基づけば、価値の低いものに金銭を支払う人はいない。
つまり、「御用聞きケアマネジャー」に自己負担を支払ってまで対応してもらいたい
と考える人はほとんどいないので、彼らは職を失う危機に迫られることになる。
自分の仕事に自信を持って価値があると言える人は、自己負担の導入に反対など
しない。
居宅介護支援費に自己負担金を導入することには、介護保険財政の緊縮という意味
合いもあるが、それ以外にも多くの意義があると考えている。しかし、そうした
意義を差し置いてでも、「御用聞きケアマネジャー」の淘汰に一役買ってくれるので
あれば言うことなしだ。
居宅介護支援費の自己負担金導入にあれこれと屁理屈を並べて猛反発している人に
対して言いたいことは山ほどあるのだが、また今度にしよう。