前回、
「回復の見込みがないとされている部位に対して、明確な根拠も適切なアプローチ
もなくリハビリテーションという名の訓練を継続することは、場合によっては苦行
であり拷問に近い行為となり得る。そしてその対象者のメンタルに悪影響を及ぼす
危険性を持っている。」と申しあげたが、「高齢者にリハビリを施すことは無駄だ」
ということではないとも申し添えた。
以前に「フレイル予防を通じた健康長寿のまちづくり」を提唱し、全国各地へ出向
き、取り組みの促しを行っている飯島勝矢東京大学教授らの研究をご紹介した。
同研究では、フレイル(虚弱)予防への優位性は
『 地域活動 > 文化的活動 > 運動習慣 』となっており、運動習慣の貢献
度が一番低いことになる。
一人で運動や体操を黙々とやっている人よりも運動なんか一切しないけど町内会の
行事には必ず参加している人の方が健康でいられるということだ。
要するに、「人は人とふれあってこそ、衰えを予防することができる。」また、
「役割がある。居場所がある。人の役に立つ。」といった精神活動が重要である
ということだろう。
つまり私が言いたいことは、病変に対しては、リハビリテーションを含めた適切な
医学的アプローチを行う必要はあるが、「人が生きること、生活すること」に対して
は、精神的な活動の要素がなければ効果はほとんど期待できないということだ。
人の精神状態はプラスにもマイナスにも作用する。
回復の見込みがない部位やできないことにばかり目を向けて、麻痺をしていない
体の動く部位や低下しつつもできていることに目を向けられずに自分を全否定して
しまう状態に陥ってはいけない。
持っている能力を十分に発揮することができる条件を整えつつ、出来ないことは
道具を駆使したり、生活環境に変化を加えるなどで補う。そして場合によっては
社会の偏見や思い込みを是正することこそが真のリハビリテーションであろう。
そのために私たち相談援助の専門職は、ご利用者やご家族からの「もっとリハビリ
を受けさせてほしい」との要望を聞くだけで留まるのではなく、「どのように生活
していきたいと考えているのか」を丁寧に聞き取っていく必要がある。
