北海道江別市でケアプランセンター、小規模多機能ホーム、デイサービス、訪問介護施設を運営するみのりの丘グループ

みのりの丘

みのりの丘代表ブログ

実生活の中にある精神活動(その2)

2025.10.6

前回、「はっきり言って、『自立支援のケアを劣化させる』ではなく、初めから自立

支援ケアなど存在していないに等しい」と申し上げた。

 

それはなぜかと言えば、公的社会保険サービスといえど、介護保険サービスは歴と

した”商売”だからである。ご利用者からの「体を洗って」「風呂に入らせて」との

要望を断れば、他の事業者へ鞍替えされてしまうので、御用聞き状態で上げ膳据え

膳の至れり尽くせりで対応するのである。これは自立支援とは真逆の支援内容だ。

 

さらにこの流れを助長している悪の根源は、地域包括支援センターの職員と居宅

介護支援事業所のケアマネジャーだ。

彼らは通所介護事業者に対して、「自宅で入浴できているし、一人で体を洗うことも

できるけど、本人が強く希望しているので事業所でも入浴サービスを提供し、希望

があれば体も洗ってあげてほしい」と要求してくるのである。

 

万が一にも通所介護事業者が「自立支援ケアに反する」といって、その要望を断ろ

うものなら、「あの事業所はこちらの要望を聞かない悪い事業所だ」とのレッテルを

貼り、紹介事業者リストから外すのである。

 

ご利用者にとって自立した生活とは何かを考え、計画を立てて、支援者に実践して

もらうことの要であるはずの地域包括支援センターの職員と居宅介護支援事業所の

ケアマネジャーがこんな始末なのだから、介護保険サービスに自立支援ケアなど

存在していないと言われても仕方がないだろう。

 

次期介護保険制度改定の話題にあがっている居宅介護支援費の自己負担金導入に対

して「ご利用者からの要望が断りにくくなる」といって多くの居宅介護支援事業所

のケアマネジャーが導入に反対しているそうであるが、「あんたら今もご利用者から

の要望を鵜吞みにして事業者へ丸投げしてるじゃないか」と思わず突っ込みを入れ

たくなる。

 

あくまでも私の個人的な考えではあるが、自立支援ケアは医療職を中心とした専門

家チームによる医学的アプローチ型の方法では優位性のある効果は得られない。

もういい加減、心身機能や身体構造に医学的アプローチを施せば、誰でも健康的で

自立した生活を営むことができるという呪縛から解き放たれるべきだ。

そのことは、何度も紹介している飯島勝矢東京大学教授らのフレイル予防(虚弱)

研究の結果を見れば一目瞭然だ。

 

フレイル予防への優位性は『 地域活動 > 文化的活動 > 運動習慣 』と

なっており、運動習慣の貢献度が一番低い。要するに、「人は人とふれあってこそ、

衰えを予防することができる」また、「役割がある。居場所がある。人の役に立つ」

といった精神活動が重要であるということだろう。

 

こうした精神活動は、「運動・口腔・栄養」にかかるトレーニングで養われることは

ほぼない。身の回りにある実生活の中にこそ精神活動のきっかけが溢れている。

本気で自立支援ケアを実践するのであれば、多少のハンディキャップを持っていて

も、実生活の中にある精神活動に参加して、それを継続することができるように

社会全体への働きかけを行うことから始めるべきであろう。その延長線上に具体的

な支援内容が生まれてくるはずだ。

ただ残念ながら、福祉の専門職の中にこうした支援内容をコーディネートする役割

を担うだけの知識や技術を持つ者がほとんどいないことが悲劇だ。

 

こうした現状を理解もせず「自立支援のケアを劣化させる」と暴論を吐くとは、

高齢者介護業界の代表者を名乗る者たちは終わってる。

彼らに任せておくと、バーンアウトする優秀な専門職が続出し、寝たきり高齢者が

急増することだろう。

 

 

 

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