政府が提示した「中山間・人口減少地域でのサービス基盤の維持を目的とした都道
府県が定める対象地域の中で、管理者や専門職の常勤要件といった人員配置基準の
緩和を認める」などの介護保険制度改正案に端を発して、業界関係者等から多くの
反発が起きている。
反対意見の多く論点は「サービスの質の確保ができなくなる」ことにある。
同制度を定める国からも、制度を利用する国民や業界関係者からもこの「サービス
の質」という言葉がよく聞かれるのだが、皆が思う「質」って、何を持って担保さ
れているのだろうか。
今回の反発は、「人員基準の緩和」つまり頭数が減ることで質が低下すると訴えてい
るわけだが、反発している人たちはサービスの質を担保するうえで必要な人員につ
いて明確な根拠があって論じているのだろうか。
そもそも、「サービス」と一言で片づけられているが、具体的にどのようなサービス
を指して、「頭数が足りない」と言っているのだろうか。
介護サービスといっても、専門職の介入がほとんど必要がない場面もあれば、マン
ツーマンの対応を要する場面もある。どちらかの状況に人員の基準を置けば、恐ろ
しいことが生まれる。
マンツーマン対応にその基準を置けば、それ以外の場面では人員が余剰となる。
ただでさえ人員不足な状況にあるのに、余剰が生まれるなどもってのほかだろうし
事業運営にも大きく影響してしまう。
またその逆に、介入がほとんど必要がない場面にその基準を置けば、マンツーマン
の対応ができなくなり、サービス提供に支障をきたし、ご利用者に大きな損失が生
まれてしまう。
さらには、同じサービス種別であっても重度要援護者の生活支援を主なサービス提
供内容としている事業者と軽度要援護者の趣味活動支援を主なサービス提供内容と
している事業者では、必要とする人員がまるで違う。
どちらかの事業者にその基準を置けば、前述同じ状況になってしまう。
冒頭の反発している人たちって、内容を理解したうえでサービスのご利用者やサー
ビス提供する我々のことを思って発言しているのか大いに疑問がある。
穿った見方をすると、反発すること自体を目的として発言しているように思える。
財源や人員には限りがあるということを前提にして、手厚い介護が必要なところ
(事業者や場面)には手厚い人員を、そしてそうではないところにはそれなりの
人員で十分、といった具合に現状に則した真っ当な意見を述べることができる人は
いないのだろうか。
そのためには、「管理者や専門職の常勤専従要件といった人員配置基準の見直し」は
中山間・人口減少地域に限らず最低限必要なことである。そういった点においては
反発している人たちよりも改正案を示している政府の方がよっぽど現場に則した
考えを持っていると思える。
誰が我々の足を引っ張っているのだろうか。
