『厚生労働省で介護保険制度を所管する老健局の黒田秀郎局長が18日の参議院・
厚労委員会で、カスタマーハラスメントから介護従事者を守る対策をすべての介護
事業者に義務付ける方針を改めて示した。』との報道を見て思うこと。
厚労省から言われるまでもなく、介護事業所の経営者や管理者は大切な職員を守る
ために日々努力を重ねており、様々な対策を講じている。
そして、カスタマーハラスメントに該当する事案が発生した場合には、当該ご利用
者やそのご家族に対して毅然とした対応を行うこともあるし、サービス提供の中止
を決断することもある。
しかし厚生労働省は、介護事業者や従事者が抱える「カスタマーハラスメント対応
の悩み」の本質が見えていない。
例えば、認知症状が進行しているご利用者から暴言を受けた場合、これまではそう
した状況も含めてケアの対象としてきた。これは、「悪いのは病気であって人では
ない」という理屈からそうした対応が常識とされている。
でも、ケアには限界があるし、ケアにかかわる従業者だって人間だ。過度な暴言を
繰り返し受ける状況になれば、精神的負担が大きくなり疲弊していく。
介護事業者は、そのような状況を防ぐためにご家族や主治医と連携を密にして病状
や症状の安定を図る取り組みを行ったり、ケアの在り方の見直しや特定の従業者に
負担がかからないようにシフトを組んだりするのだが、正直限界はある。
また介護事業者や従業者は、理由がどうであれ、ご利用者やご家族のハラスメント
が続いたからと言って、介護サービスの提供を中止することにはとても抵抗を感じ
てしまう。「ケアが必要であることにかわりはなく、自分達がサービスの提供を中止
してしまえば、ご利用者の生活が危険にさらされてしまう」とか「解決しないまま
サービスの提供を中止しても、別の事業者が同じ悩みを抱えながらサービス提供に
あたることになってしまう」といった具合に。
飲食店等で見られるような、粗暴の悪い客を店から追い出すこととはわけが違う。
カスタマーハラスメントから介護従事者を守る対策をすべての介護事業者に義務付
けることは大いに結構なことだが、本質を理解しないでルールを作ったところで、
「仏作って魂入れず」となることは目に見えている。
