北海道江別市でケアプランセンター、小規模多機能ホーム、デイサービス、訪問看護ステーションを運営するみのりの丘グループ

みのりの丘

みのりの丘代表ブログ

軽度の支援への対応(その2)

2018.10.19

昨日に引き続き、『軽度の支援』への対応について書いてみたい。

 

国の施策で、『介護が必要となる状態を未然に防ごう』と約30年近く続けられて

いる事業がある。

 

その事業は時代背景と共に名称の変更はあるが、内容は大きく変わっていない。

平成2年に創設された在宅介護支援センターによる介護予防教室、平成18年からは

介護予防特定高齢者施策、平成22年からは二次予防事業と名称のみ変更された。

 

これらの事業の考え方は、

高齢者が要介護状態になるのは、運動機能や口腔機能が低下したり、口腔衛生や

栄養状態が不良になることによって起こるため、短期集中ミッションでこれらの

危険因子を取り除くというものである。

当然、この事業は公費によって行われる。

 

しかし、

これらの事業に対する客観的な成果は未だに報告されていない。

にもかかわらず、大切な社会保障費を使って30年近く未だに続けられている。

 

国は、この取り組みが正しいと信じているのか、考えることそのものを止めて惰性

で取り組んでいるのかはわからないが、非常に効果が薄いことはだれの目から見て

も明らかである。

 

何故、効果が薄いのか、

人は、『食べて、出して、寝ることで生命を維持する』という単純なつくりには

なっていない。

人は生きていくうえで、『情緒的な結びつきや自尊心、自己実現』が重要な要素と

なる。

心身の機能が衰えるのは、結果であって主要の原因ではない。

医療従事者がよく陥る『木を見て森を見ず』、『病気を見て生活を見ず』である。

 

そのため、

国の基準に該当した高齢者を自治会館等に集めて、3か月間集中して体操や栄養

指導を受けて、「はい、元気になりましたね。あとは自分で頑張って。」といって

効果など出るわけがない。

まるで、テレビでよく流されているダイエットCMのようである。

 

さらに付け加えていうならば、

こうした事業に参加する方の大半は、行政にいちいち言われなくても、老化予防に

関心がある方々ばかりで、運動や趣味にかかるサークル活動をいくつも掛け持ち

している。

本来、ターゲットにしたいのは、そうした活動を行っていない方であるが、この

事業への参加率は極めて低い。

 

国を含めた行政機関が主導する事業は、

『公平性や客観性』とかいう制限があるため、全国どこの地域へ行っても、同じ

ようなメンバーが同じような活動をまるで金太郎飴のように行っている。

 

そこで、『ノーベル医学・生理学賞』を受賞した京都大学特別教授の本庶先生の

言葉が思い出される。

「・・何が正しいのか何が重要なのかわからいところで、この山に向かってみんな

で攻めようということはナンセンスで、多くの人に、できるだけたくさんの山を

踏破して、そこに何があるかということをまず理解したうえで、どの山が本当に

重要な山かということを調べる・・(中略)・・もっともっとたくさんの人に

チャンスを与えるべきだと思います。」

 

各地域では、民間もしくはボランタリーな活動で、効果が期待される取り組みが

いくつもある。無駄な活動に巨額の公費を投じるくらいなら、地域のこうした取り

組みに対して少額でもいいから助成したほうがよほど効果が期待される。

 

今回は『介護予防』を中心に書いたが、次回は『地域の助け合い』について書いて

みたいと思う。