3年前までの10年間
北海道介護支援専門員研修の企画委員を委嘱された関係で、これから
介護支援専門員の実務に就く方々への講義を年数回ほど担当していました。
その講義の序盤でケアマネジメントの基本について講話するのですが
特にリキを入れてお話ししていたのが、「QOLの向上」についてでした。
QOLとは、Quality of Lifeの略語として世間一般に使われている言葉
ですが、日本語では「生活の質」、「生命の質」などと訳されます。
介護の分野で言う生活の質とは、高級マンションに住み、外車に乗り、
高級料理を食べることではなく、今まで続けてきた暮らしをたとえ
病気や障がいを受けても続けることができることを言います。
私は、この講義ではよく、「目玉焼きの食べ方」に例えて話をします。
実際に受講生の方々に聞くと、硬く焼く、半熟、半熟でも白身はしっかり焼く
焦げ目がつくほど焼く、両面焼くなど好みの焼き方は様々でした。
また、味付けも醤油、ソース、塩といった定番以外にも焼き肉のたれをかける
とか、○○社の○○ソルトじゃなきゃ嫌だとか、何もかけないのが好きなど
好みは多様でした。
目玉焼きの食べ方一つとっても、好みやこだわりが多様にありますが、生活全般
に置き換えれば、100人居れば、100通りの暮らしがあります。
私たちは、そういった好みやこだわりを経済的、身体的、精神的な制限がなければ
ほとんどのことを実現することができます。
ところが、今まではそのように実現できていたことが、病気や障がいなどによって
人の手を借りなければ実現できなくなることがあります。
そうなった場合、自分の好みやこだわりは、自分主導で実現していたものが、支援
する人主導で実現してもらうことになります。
例えば、今までは夜寝る前にお風呂にゆっくり浸かってからベッドに入る習慣が
あったとしても、自分で風呂を沸かすことが出来なかったり、自力で浴室や浴槽ま
で移動することが出来なければ、支援してくれる人の都合に合わせた時間やタイミ
ングで入浴することになります。
もちろん、支援者が、支援を必要とする方々の今まで続けてきた暮らしやこだわり
をすべて実現することは非常に難しいことではあります。
ただ、介護の分野に身を置いているものとして、支援を必要とする方々のQOLを常
に念頭において、支援したいと考えております。
今週、当方の内部研修で「QOLを意識したケアの在り方」について、職員に講話す
る予定でおります。
QOLの理解を深めながら、日頃の支援への思いを共有して、質の高い介護サービス
の提供を実現したいと考えております。