3年に一度の改定が行われている介護保険制度であるが、次回(令和3年度)の
改定案で大きな話題となっていることがある。
それは、介護保険サービスの中で自己負担が発生しない(簡単に言うと無料)で
支援を受けることができる『居宅介護支援費を有料化』しようという動きである。
居宅介護支援とは、ケアマネージャーが実施するケアプランの作成を含めた相談
援助のことである。
この『居宅介護支援費の有料化』には、下記にあげるような理由で多くの業界人が
反対の意向を示している。
①今までには無かった自己負担金を徴収するという事務作業が増えることで
ケアマネージャーの業務負担が増え、本来のマネージメント業務へ支障が出る。
②経済的な理由で相談援助を受けず、結果として必要な介護サービスを利用しない
人が増えてしまう。
③自己負担金が発生することで、利用者や家族からの有用性が低いあるいは現実的
ではない要望(いわゆるゴリ押し)を引き受けざるを得ない状況になりやすい。
これらの反対意見を言う人は、介護保険制度ができた成り立ちや現在に至るまでの
経緯をあまり理解していない人であったり、業界の常識が世間一般の非常識である
ことに気が付かない人ばかりである。
介護保険サービスは、自己負担が発生する社会保障制度であり、民間企業へ市場が
開放された歴としたサービス業である。ましてや、行政がマネージメントする措置
制度でもない。
民間企業が運営するサービスがただで使えること自体が不自然である。
無料で利用できるケアマネージャーを利用者や家族はどのようにとらえているのか
と言えば、「役所の人?ボランティアさん?どこかの介護サービス事業者の
一スタッフ?」といったところで、他の介護サービス事業が有料なのに無料で利用
できるからといって、居宅介護支援に特別な思いなどみじんもない。
報酬は全額公費で賄えることに胡坐をかくのではなく、そこで働くスタッフへ
もっと敬意を払ってもらいたいと言いたいぐらいだ。
新たな業務が増えて大歓迎する人はほとんどいないだろうが、提供したサービスへ
の対価を受け取る行為は民間企業ではごく当たり前のことであり、業務の一環と
いう理解を持っている。
こんな理由をあげて本気で反対している人は、役人気質が抜けない旧体制の福祉
事業関係者が多い。
また、居宅介護支援費が有料化されても、行政機関の相談窓口(役所の担当窓口、
地域包括支援センター等)が無料で相談を受け付けてくれる。
ちなみに居宅介護支援費も成功報酬であって、ただ相談を受けただけでは対価を
受け取ることはない。
それを「ただ働きだ!」と不満に思う輩もいるようだが、労働の全てが報酬に直結
する仕事なんてこの世にはない。
③を反対の理由としてあげている人に対しては、「あんた本気でそれ言ってんの
か?」と問いたくなる。
これは言い換えると「無料だった時は、無能な私でも騙しだまし利用者や家族を
手なずけることはできたが、有料になれば化けの皮がはがれてしまう。」と言って
いるようなもので、常軌を逸しているとしか言いようがない。
国の政策が必ずしも正しいとは思わないし、モノ申したいときも多々あるが、
今回の改定案に対する批判については、
国の政策を批判する前に自分の無知や非常識を改善するべきではないだろうか。